
Abstract #4016
進行胃癌に対するS-1単剤 vs. S-1 + Docetaxel療法の無作為化第III相比較試験 (START trialのupdate)
Randomized phase III study of S-1 alone versus S-1 plus docetaxel (DOC) in the treatment for advanced gastric cancer (AGC): The START trial update.
Masashi Fujii, et al.

2011年 消化器癌シンポジウムにて、S-1 + Docetaxel (DOC) 療法は、進行胃癌に対する外来にて施行可能な有効な治療であることを報告した1)。しかし、本試験では、副次評価項目であるTTP (time to progression) およびRR (response rate) でS-1に対して優越性が示せたが、主要評価項目であるOS (overall survival) において有意差を示せなかった。そこで今回は、OSにおいて有意差を示せなかった理由をサブセット解析にて検討した。
主な適応基準は、測定可能病変または測定不能病変を有する進行胃癌、化学療法未施行、年齢20-79歳、PS 0-1、臓器機能が保持されているなどである。スタディデザインは下図に示す通りである。

・ | 主要評価項目: OS |
・ | 副次評価項目: TTP、RR、安全性 |
サブセット解析にて、測定不能病変を有する症例、リンパ節転移を認めない症例、および2nd-lineにタキサン系薬剤を投与した症例は、DOC + S-1治療の有益性を認めた。

DOC + S-1群で、2nd-lineにタキサン系薬剤を選択した症例が52例 (16.8%) 認められた。これはプロトコール規定のために (毒性による治療延期など) DOC + S-1療法の継続ができなかった症例に対して、2nd-lineでタキサン系薬剤が選択されたものと考えられた。S-1群では、タキサン系薬剤の2nd-line治療が30.7%で施行された。
測定不能病変を有する症例でのOS中央値は、DOC + S-1群が18.3ヵ月、S-1群は10.6ヵ月で有意差を認めた。(p=0.0389)
測定不能病変を有する症例でのOS中央値は、DOC + S-1群が18.3ヵ月、S-1群は10.6ヵ月で有意差を認めた。(p=0.0389)

本試験では測定不能病変を有する症例の全症例に占める割合が24.3%で、SPIRITS 試験2)での35.2%より少なかった。治療効果の期待できる測定不能病変症例がSPIRITS試験より少ないことが、本試験で有意差が認められなかった理由の一つと考えられた。

START試験において、主要評価項目であるOSにおいて有意差を認めなかった理由として、サブセット解析の結果、S-1群において2nd-lineにタキサン系薬剤を選択した症例が多く、タキサン系薬剤のクロスオーバー効果によるものが考えられた。また、効果の期待できる測定不能病変を有する症例の占める割合がSPIRITS試験より低かったこともその一因として挙げられる。
我が国の標準的治療であるCDDP + S-1療法は、輸液管理のため多くの場合入院が必要となるが、START試験で検証されたDOC + S-1療法は外来治療が可能なレジメンであり、その試験結果が注目されていた。しかしながら2011年 消化器癌シンポジウムで発表された生存曲線をみると1)、その期待は大きく裏切られたものとなっている。治療開始後6ヵ月以内の生存曲線は、両群ともほぼ重なっており、いわゆるshoulder effectが全く認められなかった。これはshoulder effectが認められたSPIRITS試験のCDDP + S-1療法、JCOG9912のCPT-11 + CDDP療法、TOP002/GC03のCPT-11 + S-1療法の生存曲線の特徴と異なっている。この解釈としてshoulder effectが認められた他のレジメンに比べて、DOC + S-1療法の奏効率の低さが挙げられよう。初回治療において、early tumor shrinkageの必要な症例も数多くあり、それら症例の多くを救えなかった可能性がある。
その一方で、予定されていたサブセット解析からDOC + S-1療法は、測定不能病変において効果が期待されることが示唆された。この解釈としては、我が国における臨床試験に登録される測定不能病変の多くが、軽度の腹膜転移を有する症例であり、tumor volumeの少ない症例に効果が認められたと考えていいだろう。これらdisease controlの比較的容易な症例において、毒性等でDOC + S-1療法の治療継続がプロトコール上困難となった症例で、引き続きプロトコールオフの形でDOC + S-1療法を継続している症例が多く含まれているものと思われる。これらサブセット解析でDOC + S-1療法の効果が示唆された症例は、CDDP + S-1療法のサブセット解析でも同様の効果が認められており、ITT解析でnegativeであったDOC + S-1療法に対する過度の期待感を持たないのが妥当であろう。
その一方で、予定されていたサブセット解析からDOC + S-1療法は、測定不能病変において効果が期待されることが示唆された。この解釈としては、我が国における臨床試験に登録される測定不能病変の多くが、軽度の腹膜転移を有する症例であり、tumor volumeの少ない症例に効果が認められたと考えていいだろう。これらdisease controlの比較的容易な症例において、毒性等でDOC + S-1療法の治療継続がプロトコール上困難となった症例で、引き続きプロトコールオフの形でDOC + S-1療法を継続している症例が多く含まれているものと思われる。これらサブセット解析でDOC + S-1療法の効果が示唆された症例は、CDDP + S-1療法のサブセット解析でも同様の効果が認められており、ITT解析でnegativeであったDOC + S-1療法に対する過度の期待感を持たないのが妥当であろう。
(レポート: 松阪 諭 監修・コメント: 瀧内 比呂也)


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