このサイトは医療関係者の方々を対象に作成しています。必ずご利用規約に同意の上、ご利用ください。記事内容で取り上げた薬剤の効能・効果および用法・用量には、日本国内 で承認されている内容と異なるものが、多分に含まれていますのでご注意ください。
|
Abstract #454
SPIRITT試験:KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌患者に対する2nd-line治療におけるFOLFIRI + PanitumumabとFOLFIRI + Bevacizumabの無作為化比較第II相試験
SPIRITT (Study 20060141) : A Randomized Phase 2 Study of FOLFIRI With Either Panitumumab or Bevacizumab as Second-Line Treatment in Patients With Wild-Type (WT) KRAS Metastatic Colorectal Cancer (mCRC)
J. Randolph Hecht, et al.
2nd-lineにおける至適な分子標的治療薬とは?
〜SPIRITT試験から垣間見えるもの〜
〜SPIRITT試験から垣間見えるもの〜
本試験では、PFS、OS (overall survival) ともほぼ同等の成績であり、毒性に関しては総じてPanitumumab群が若干高度であるが、腫瘍縮小効果に関してはPanitumumab群32%、Bevacizumab群19%とPanitumumab群で良好な結果であった。特筆すべきは、何らかの患者背景による影響があるかもしれないものの、両群とも予想を遙かに超える良好なPFSとOSを認めたことであり、実地臨床への応用を鑑みたとき、1st-line、2nd-line、時に3rd-lineとして分子標的薬をうまく使っていくことの重要性が認識されたのではないだろうか。
本試験はもとより無作為化第II相試験であり、検証的な結論は導き出せない。現在、2nd-lineにおけるCetuximabとBevacizumabを比較する第II相試験としてongoingであるACCORD22/PRODIGE18試験や、主要評価項目がOSである以外SPIRITT試験とほぼ同様の試験デザインで症例登録中である、わが国のWJOG 6210G試験の価値を低めるものではなく、統合解析による検討やバイオマーカーを含めたさらなる検討の重要性が増したといえる。
Panitumumab (Pmab) は2nd-line治療としてPmab + FOLFIRI療法とFOLFIRI単独療法とを比較する第III相試験 (20050181試験) において、KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌患者のPFSを有意に改善することが示されている。今回、1st-line治療としてBev + L-OHPベースの化学療法レジメンにより治療を施行したKRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌を対象としてPmab + FOLFIRIとBev + FOLFIRIを比較した、多施設共同無作為化比較第II相試験SPIRITTの結果を紹介する。
患者をPmab (6.0mg/kg) + FOLFIRIを2週毎投与 (Pmab群) とBev (5.0mg/kgもしくは10mg/kg) + FOLFIRIを2週毎投与 (Bev群) とに1:1の割合で無作為に割り付けた (図1)。患者の適格基準は、KRAS 野生型、ECOG PS≦1、CPT-11および抗EGFR抗体薬が未投与で、1st-lineとして4サイクル以上のBev + L-OHPベースの治療がfailureした切除不能進行・再発大腸癌患者である。
主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、奏効率、安全性であった。
主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、奏効率、安全性であった。
KRAS 野生型で治療が施行された切除不能進行・再発大腸癌患者182例が割り付けられた (表1)。
主要評価項目であるPFS中央値は、Pmab群7.7ヵ月 (95% CI: 5.7-11.8)、Bev群9.2ヵ月 (95% CI: 7.8-10.6) であった (HR=1.01, 95% CI: 0.68-1.50) (図2) 。副次評価項目であるOS中央値は、Pmab群18.0ヵ月 (95% CI: 13.5-21.7)、Bev群21.4ヵ月 (95% CI: 16.5-24.6) であった (HR=1.06, 95% CI: 0.75-1.49) (図3)。また、奏効率はPmab群32%、Bev群19%であった。
Grade 3/4の有害事象の発現頻度はPmab群76%、Bev群66%であった。Grade 5 (死亡) の発現頻度はPmab群10%、Bev群7%であった。Grade 3以上で両群間で5%以上の差がみられた有害事象は表2の通りである。また、いずれかの有害事象により治療を中断した症例は、Pmab群30%、Bev群26%であった。
1st-lineでBev + L-OHPベースの治療が施行されたKRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌に対する今回の試験において、PFSのHRは1.01 (95% CI: 0.68-1.50)、OSのHRは1.06 (95% CI: 0.75-1.49) であった。また、奏効率はPmab群で高値であった。なお、Bev群の54%の症例に後治療として抗EGFR抗体薬が投与されていた。
両群の安全性プロファイルは、これまでの報告と一致しており、有害事象による治療中断率は両群で同等であった。
両群の安全性プロファイルは、これまでの報告と一致しており、有害事象による治療中断率は両群で同等であった。