腫瘍縮小とQOL、OSの関係 ―CRYSTAL試験・OPUS試験のレビュー
小松 嘉人先生
小松: 抗EGFR抗体薬を用いたaggressive approachに関して、CRYSTAL試験とOPUS試験のデータを簡単にレビューしたいと思います。
■CRYSTAL試験 −腫瘍縮小効果がQOLに及ぼす影響
1つ目はCRYSTAL試験の後解析で、KRAS 遺伝子野生型の切除不能大腸癌患者のQOLに及ぼす腫瘍縮小効果の影響を検討したものです (Gastrointestinal Cancers Symposium 2011, abstract #476) 22)。症状の評価指標にはQLQ-C30が用いられました。
その結果、ベースライン時に症状のあった患者では、FOLFIRI群に比べてFOLFIRI + Cetuximab群でレスポンダー (腫瘍が縮小した患者) が多くみられました (図9-A)。また、ベースライン時に有症状であった患者では、ノンレスポンダーに比べ、レスポンダーにおいてより早期に症状の軽減が認められました (図9-B)。症状緩和と腫瘍縮小効果の関係は、Cetuximabを併用することでより早く改善されるようです。
■OPUS試験 −早期の腫瘍縮小とOSの関係
次はOPUS試験の後解析で、FOLFOX4 ± Cetuximabの早期の腫瘍縮小能 (8週時点で20%以上の縮小) を比較し、長期予後に及ぼす影響を検討したものです (2011年消化器癌シンポジウム, abstract #398) 23)。
その結果、KRAS 遺伝子野生型の場合、早期に腫瘍が縮小した患者はFOLFOX + Cetuximab群で69%、FOLFOX群では46%でした。FOLFOX + Cetuximab群のうち、早期の腫瘍縮小が20%未満の患者のPFS中央値は5.7ヵ月でしたが、20%以上縮小した患者では11.9ヵ月と長く、OS中央値も同様の傾向がみられました24) (表2)。
以上のように、早期の腫瘍縮小は1st-line治療としてFOLFOX4 + Cetuximabを投与したKRAS 遺伝子野生型患者の69%で認められ、これらの患者では早期の腫瘍縮小がOS中央値26.0ヵ月という良好な長期予後に結びつきました。
また、KRAS 遺伝子野生型患者にみられた早期の腫瘍縮小と優れた長期予後はベースレジメンとは無関係で、Cetuximabに特有のものでした。2011年米国臨床腫瘍学会年次集会ではCRYSTAL試験の後解析も一緒に報告されており、FOLFIRI + Cetuximabにおいてもほぼ同様の結果が得られています24)。
これらの2つの試験の解析結果から、腫瘍量が多く随伴症状を有するKRAS 遺伝子野生型の患者においては、抗EGFR抗体薬の投与によってQOLが改善し、また良好な予後が得られる可能性が高いと思われます。