消化器癌治療の広場
BAD NEWSのGOODな伝え方
Answer3 Case:直腸がん

【今回のポイント】
 「えっ,手術じゃないのですか?手術ができないということは,もうだめってことですか,先生!」という質問はとても返答に困る質問です.
 このような質問があった場合は,なるべく即答を避け,患者さんの感情に気付き,質問の真意を探る【RE:気がかりの探索】ことが重要です.
 「もうだめってことですか」という言葉には患者さんのどのような気持ちが隠されているのでしょうか?



Aを選んだ方

 この返答は主に,「手術じゃないのですか?」の部分に呼応する形で,医学的には手術治療が妥当ではないことを説明(【A:医学的情報の提供】)しています.しかし「もうだめってことですか」という問いに対する返答はありません.すなわち,この対応は情報の提供に注目しすぎていて,Hさんの感情に気付く,感情を表出しても受け止める,【RE: 情緒的サポート】が欠けています.後半の言葉には,敵意すら感じられ,あまりよい対 応とはいえません.

Bを選んだ方

 一見,まわりくどいと感じられるかもしれない最初の質問ですが,この質問により,沈黙のあと,少し冷静になったHさんから次の言葉を引き出せています.Hさんの用いた言葉は「だめ」という抽象的な言葉から,「死ぬのでしょうか?」という具体的な言葉に変わりました.この言葉は依然返答に困る言葉ですが,医師は「死ぬ」を「治らない」に言い換え,【RE:気がかりを探索】しようとしています.一連のやりとりのなかで,医師は決して即答することなく,Hさんの【RE:感情を受容】しようとする態度を示しています.【RE】の部分を十分に活用し,Hさんの真意を知ることは,今後継続して情報提供をしていくうえで効果的な対応といえるでしょう.

Cを選んだ方

 まず,最初の言葉でHさんの感情の高ぶりを諭すような態度をとっており,好ましくありません.Hさんが【RE:感情を表出しても受け止める】ことが重要です.
  医師は,Hさんの「治らないのではないか」という不安に気付いたのか,「治療をすれば,結構良くなる方もおられますよ」と,希望を持たせようとしています.しかし, 【RE:患者が希望を持てる情報を伝える】ことは大切なことですが,「じゃあ,大丈夫なのですね?」という次の質問に対しては「大丈夫」の真意を問うことなく,あいまいな情報提供をしています.この対応では患者の不安が解消されないため,今後の情報提供に支障をきたす可能性があります.