ケースカンファレンス〜トップオンコロジストはこう考える〜

日常診療で遭遇する症例を取りあげ、トップオンコロジストが治療方針を議論するケースカンファレンスをお届けします。

Special1

2018年11月開催

特別企画
「胃癌に対するがん免疫療法の治療戦略」

  • 牧山 明資 先生牧山 明資 先生
    JCHO 九州病院
    血液・腫瘍内科
  • 加藤 健 先生加藤 健 先生
    国立がん研究センター
    中央病院 消化管内科
  • 門脇 重憲 先生門脇 重憲 先生
    愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部
  • 砂川 優 先生砂川 優 先生
    聖マリアンナ医科大学
    臨床腫瘍学

Nivolumabの有効性とNivolumabを使うべき患者の見極めポイント&至適患者像

ディスカッション1 急速進行例に対する治療

加藤先生

加藤私からはがん免疫療法をより有効に行うためのポイントを3点お示しします。まず1点目は、急速な進行例への対応方法です。がん免疫療法は初期の腫瘍抑制効果が弱いのではないかという指摘があります。ATTRACTION-2試験におけるNivolumab群とプラセボ群の無増悪生存期間(PFS)をみると、両群ともに治療開始後初期は急速に低下し、追跡期間中にKaplan-Meier曲線が交差することはありません(図11)。進行非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)に対する化学療法への免疫チェックポイント阻害薬の追加効果を検討したKEYNOTE-021試験も同様です(図12)。一方、化学療法、つまりアクティブコントロールとの比較では、治療開始後初期のPD例は免疫チェックポイント阻害薬群で多く、免疫チェックポイント阻害薬の効果は追跡の途中から認められ、曲線が交差することがわかります(図13)
 免疫チェックポイント阻害薬は、いったん有効性が得られるとその効果が比較的長く持続しますが、その見極めが難しいのが課題です。また、免疫チェックポイント阻害薬の効果発現には、リンパ球動員までに2〜3週間を要するため、急速な胃癌進行例に対して使用してもPDになることがあります。例えば、切除不能・再発または転移性胃癌に対する3次治療薬としてのAvelumabの有用性を検討したJAVELIN Gastric 300試験はそれが顕著に現れた試験だと思います4)。したがって、見極めは難しいですが、急速な進行を来たす症例で、Irinotecanなど化学療法の選択肢が残っている場合にはそれを優先的に用いるべきだと思います。また、2次治療を引っ張りすぎるのではなく、急速に進行する前に早めに免疫チェックポイント阻害薬に切り替えるか、化学療法併用で対応するほうがよいと思われます。

  • ※1 Reprinted from Satoh T, et al.: ESMO 2018 #617PD. Copyright 2018, with permission from Ono Pharmaceutical Co., Ltd.
  • ※2 Reprinted from J Thorac Oncol, Aug 21, 2018 [Epub ahead of print]. Borghaei H, et al.: 24-Month Overall Survival from KEYNOTE-021 Cohort G: Pemetrexed and Carboplatin with or without Pembrolizumab as First-Line Therapy for Advanced Nonsquamous Non-Small Cell Lung Cancer. Copyright 2018, with permission from International Association for the Study of Lung Cancer.
  • ※3 Reprinted from Lancet, Nov 30, 2018 [Epub ahead of print]. Cohen EEW, et al.: Pembrolizumab versus methotrexate, docetaxel, or cetuximab for recurrent or metastatic head-and-neck squamous cell carcinoma (KEYNOTE-040): a randomised, open-label, phase 3 study. Copyright 2018, with permission from Elsevier.

牧山まず、急速進行例に対してはIrinotecanなど化学療法を使用してはというご意見をいただきました。他の先生方のご見解をお聞かせください。

門脇私たちは多施設研究を実施しているのですが、前治療時に腫瘍増殖速度(TGR)が早かった症例では、やはりNivolumabに比べてIrinotecanのほうが、無増悪生存期間において良好な傾向が認められています。加藤先生がご指摘のように、急速進行例は免疫チェックポイント阻害薬では対応仕切れないのは事実ですので、最初にIrinotecanという選択肢は妥当だと思います。

牧山急速進行例とは具体的にどのような症例でしょうか。

門脇TGRが0.3%/日を超える症例です。標的がない腹膜播種に関してはわかりません。
 TGR(tumor growth rate)は直前治療時における標的病変の最大腫瘍径和をPD時D2、PD前D1とした場合、((D2-D1)/D1)×100)/CT間隔(日)で算出します。

砂川私も加藤先生のご意見に賛成です。加藤先生にお聞きしたいのですが、急速進行例の場合はもう免疫チェックポイント阻害薬を使用するチャンスはないとするべきなのでしょうか。それとも、アップフロントに使用することを考え、早めに切り替える戦略がよいのでしょうか。

加藤最初はやはりIrinotecanを選択して、それで抑えられればある程度のところで切り替えるのが1つの方法だと思います。もちろん、Irinotecanが有効であれば、できるだけ引っ張るのも1つの手です。2次治療のPaclitaxel+Ramucirumabの段階で、少し早めの切り替えを念頭に置きながらCTでチェックするのもよいと思います。Nivolumabのよい点は、有効な症例には長く効果が持続する点です。やはり1回はチャレンジすることが重要だと思いますので、どこかでその機会を作ってあげたいというのが正直なところです。

牧山なぜ、急速進行例では免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいのか、先生はどのように考察されていらっしゃいますか。

加藤胃癌の急速進行例では1〜2週間で容態が変わることを経験しますが、そのような症例にNivolumabを投与して、リンパ球が2週後に動員されても、もうすでに全身状態が悪く、効果が発揮されないのだと思います。恐らく、それが免疫チェックポイント阻害薬の特性なのではないかと思います。

牧山なるほど、Nivolumabは急速進行例を得意としないので、そのような症例には化学療法が選択肢となり得るというご意見で皆さん一致されているようですね。

ディスカッション2 腹膜転移・腹水症例に対する治療

加藤さて、次に腹膜転移例ではNivolumabの効果が得られにくく、使用しないほうがよいという意見があります。そこで、当院のNivolumab単剤投与例で、腹水なし/少量例(30例)と腹水中等量/大量例(17例)を比較しました。全奏効割合(ORR)は、腹水なし/少量群16.7%、腹水中等量/大量群0%でしたが、病勢コントロール割合(DCR)はそれぞれ62.5%、46.2%と後者が明らかに不良ということはありませんでした。また、PFSは腹水なし/少量群2ヵ月、腹水中等量/大量群1.5ヵ月と差はありませんが(p=0.126)、当然ながらOS中央値はそれぞれ6.4ヵ月、2.5ヵ月(p=0.001)と腹水中等量/大量例では予後不良でした。しかし、薬剤自体の効果を示すPFSに差はありませんので、腹水を認める患者さんにNivolumabは投与しないほうがよいとは結論できないと思われます。実際に、当院でも腹膜播種、肝転移を伴う残胃癌の63歳男性で、Nivolumabの治験に参加した患者さんにおいて、Nivolumab投与後に肝転移も腹膜転移も改善が得られた経験があります(図2)。また、大量腹水があり、2週ごとの腹水濾過濃縮再静注法(CART)が必要な患者さんにNivolumabを投与することで、腹水が減少し、排液の頻度が低下した症例も経験しました(図3)。Nivolumabの効果発現までには多少時間がかかりますので、腹水排液などで症状をコントロールしながら、投与すればよいと思います。

牧山私自身は、腹水が改善した症例を経験していないので、効果は得られにくいという感触をもっていましたが、なかにはメリットのある方もいるということですね。実臨床では、Irinotecanを使用できない、大量の腹水を認める症例を診ている先生方も多くいらっしゃると思います。そのような場合は、Nivolumabを投与したほうがよいのでしょうか。

加藤全身状態によると思いますが、他に選択肢がないのであれば、患者説明を十分に行った上での投与が考えられます。効果があった方についてお話ししましたが、もちろん、効果がない方も数多く経験しています。効果がある方の多くは3次治療以降のサルベージラインの患者さんで、すでに緩和療法のインフォームドコンセントなどが実施されています。しかし、患者さんの期待値が高い分、Nivolumabのインフォームドコンセントは控えめに、緩和医療のインフォームドコンセントは十分にするなど、十分な準備をした上で行っています。

門脇腹水が大量にあっても治療ができる方はいますので、CARTを実施しながら投与するという方法は非常に勉強になりました。私たちも腹水症例でNivolumabの効果が得られた方を経験していますので、ドレナージをしながら投与するというのは良い方法だと思います。

砂川腹膜転移や腹水がある症例に免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合、どのタイミングで使用すればよいのでしょうか。例えば、タキサン系薬剤の効果が期待できれば併用して早めに使い切るべきなのか、あるいは標準的にタキサン系薬剤を使用して、次治療で免疫チェックポイント阻害薬を単剤あるいは併用するのか、どのような戦略をとるべきでしょうか。

牧山現時点では化学療法とNivolumabの併用療法は承認されておりませんので、1次治療で治療がPDとなった際に、どのタイミングでNivolumabを使用するのかをあらかじめ決めておく必要があると思います。

加藤海外では、腹腔内にピシバニール®を投与した上で、一時的に免疫チェックポイント阻害薬で非特異的な免疫を活性化させ、その後で免疫チェックポイント阻害薬を外す方法もあるようです。将来的には、リンパ球のプロファイルをみながら投与できればスマートだと思いますが、現時点では具体的なアイデアがまだない状況だと思います。

ディスカッション3 全身状態を考慮する必要性

加藤KEYNOTE-061試験では、進行胃癌に対する2次治療としてのPembrolizumabの有用性が検討されました5)。ECOG PS別のサブグループ解析では、PS 0の患者のOS中央値が12ヵ月であったのに対して、PS 1の患者では5ヵ月でした。この結果をみると、全身状態の良好なほうが、免疫チェックポイント阻害薬の効果は高いという印象です(図4)。一方で、ATTRACTION-2に関しては、ECOG PS 0と1でOS延長効果に大きな差はありませんが、PS 0のほうがより成績は良好でした。全身状態の評価は主観的なので難しいのですが、がん免疫療法は全身状態が比較的良いほうが効果は得られやすいと思われます。
 また、今年の日本臨床腫瘍学会では免疫チェックポイント阻害薬による急速な腫瘍増大(HPD:hyper progressive disease)に関する演題が数多く取り上げられていました6-9)。それによると、Nivolumab投与時のHPDはおよそ20%と考えられます。なお、IrinotecanによるHPDは5〜15%といわれています。HPDのリスク因子としては、PS不良、肝転移、転移数が指摘されていますので、PSが良好であることは非常に重要だと思います。これらを総合すると、免疫チェックポイント阻害薬は2次治療から早めにスイッチして使用することが望ましいのではないかと思います。

Reprinted from Lancet 392(10142): 123-133. Shitara K, et al.: Pembrolizumab versus paclitaxel for previously treated, advanced gastric or gastro-oesophageal junction cancer (KEYNOTE-061): a randomised, open-label, controlled, phase 3 trial. Copyright 2018, with permission from Elsevier.

牧山PSが1つの鍵で、早めに切り替えるのが大事なポイントだということですね。加藤先生からHPDの話題が出ましたが、このテーマについて門脇先生からもご提示をお願いできますでしょうか。

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