ケースカンファレンス〜トップオンコロジストはこう考える〜

日常診療で遭遇する症例を取りあげ、トップオンコロジストが治療方針を議論するケースカンファレンスをお届けします。

Special1

2018年11月開催

特別企画
「胃癌に対するがん免疫療法の治療戦略」

  • 牧山 明資 先生牧山 明資 先生
    JCHO 九州病院
    血液・腫瘍内科
  • 加藤 健 先生加藤 健 先生
    国立がん研究センター
    中央病院 消化管内科
  • 門脇 重憲 先生門脇 重憲 先生
    愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部
  • 砂川 優 先生砂川 優 先生
    聖マリアンナ医科大学
    臨床腫瘍学

はじめに

牧山先生

牧山本日は臨床経験が豊富なトップオンコロジストの先生方にお集まりいただき、「胃癌に対するがん免疫療法の治療戦略」をテーマにして、たっぷりと語り合っていただきたいと考えております。最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
 さて、本年のESMO 2018では、2ライン以上の化学療法歴を有する切除不能な進行・再発胃癌または食道胃接合部癌患者を対象に、Nivolumabの有用性を比較したプラセボ対照比較試験であるATTRACTION-2試験の最新データが発表されました1)。昨年のESMO 2017では、最終症例登録後12ヵ月時点における全生存期間(OS)中央値がNivolumab群5.32ヵ月、プラセボ群4.14ヵ月で、OS割合はそれぞれ27.6%、11.6%と報告されています。今回のESMO 2018では2年間の追跡結果が発表され、24ヵ月時のOS割合はNivolumab群10.6%、プラセボ群3.2%という結果でした(図11)。加藤先生はこの結果について、どのようにお考えでしょうか。

Reprinted from Satoh T, et al.: ESMO 2018 #617PD. Copyright 2018, with permission from Ono Pharmaceutical Co., Ltd.

加藤3次治療以降というサルベージ治療のラインで、Nivolumab群の24ヵ月時のOS割合が10%というのは、ほかの化学療法ではほぼ得られない素晴らしい結果だと思います。一方、5年生存率が20%を超える他の癌と比べてしまうと、胃癌の治療はやはり難しい、期待が大きかった分、ややがっかりしたというのが個人的な気持ちです。

牧山Nivolumab群の268例中3例でCRに到達し、そのうち2例はマイクロサテライト不安定性(MSI)が認められない患者であることも印象的です。Nivolumab群の奏効例(CR+PR)は32例で(プラセボ群0例)、奏効例のOS中央値は26.61ヵ月と中央値でも2年以上の生存期間が得られ、24ヵ月生存割合は61.3%に達していました。SD例はNivolumab群76例、プラセボ群33例で、12ヵ月目におけるOS割合はそれぞれ36.1%、24.2%、OS中央値はそれぞれ8.87ヵ月、7.62ヵ月と有意差はないものの(p=0.3084)、Nivolumab投与の有効性を示すデータが得られました(図21)。砂川先生はこのSD症例の結果についてどのように考察されますか。

Reprinted from Satoh T, et al.: ESMO 2018 #617PD. Copyright 2018, with permission from Ono Pharmaceutical Co., Ltd.

砂川12ヵ月時のOS割合には10%以上の群間差がありますが、統計学的有意差がないことをどのように考えるかだと思います。Kaplan-Meier曲線をみると、SDが得られれば多くの患者さんで臨床的な有益性が期待できそうに思えます。

牧山なぜ、SD症例でもKaplan-Meier曲線に違いがみられるのでしょうか。

砂川難しいのですが、私自身はNivolumabの有効例を抽出するには、Nivolumabが奏効する症例を抽出するよりも、PDとなる症例を除外したほうがよいと考えてきました。そうした意味では、SD症例に関するこの結果は納得のいくものだと思っています。

牧山なるほど、奏効には至らなくてもPD以外の症例では、Nivolumabによる何らかの効果が期待できるかもしれないとお考えなのですね。それでは門脇先生にお尋ねします。SD症例のOSのKaplan-Meier曲線をみると、Nivolumab群とプラセボ群の差はおよそ6ヵ月時点から差がつき始めます(図21)。さらにPD症例においてもおよそ10ヵ月時点から差がつき始めます(図31)。肺癌では免疫チェックポイント阻害薬投与後の化学療法の有効性が増す可能性について報告がありますが、先生のご経験を踏まえて、この点についてのご意見をいただけますか。

Reprinted from Satoh T, et al.: ESMO 2018 #617PD. Copyright 2018, with permission from Ono Pharmaceutical Co., Ltd.

門脇過去に当施設で免疫チェックポイント阻害薬治療後の化学療法のデータをまとめたことがあるのですが、前治療の免疫チェックポイント阻害薬の効果が後治療の化学療法の効果の差に及ぼす影響を見出せなかったので、この結果の理解は今のところ難しいように思います。

牧山胃癌ではその点に関してはまだ明らかではないということですね。次に有害事象に関してですが、ほとんどの事象が投与後3ヵ月以内に発現しています(図41)。最も頻度が高いのは皮膚障害で、次に胃腸障害、肝障害、内分泌障害、肺障害と続きます。加藤先生、有害事象に関する今回の発表について何か確認すべき点はありますか。

Reprinted from Satoh T, et al.: ESMO 2018 #617PD. Copyright 2018, with permission from Ono Pharmaceutical Co., Ltd.

加藤今回、初回解析の結果と変わらないことが報告されましたので、長期間観察してもNivolumabの副作用の発現はほとんど増えることはないと思われます。ただ、ほかの癌種では、副作用発現症例のほうが奏効するというデータもありますので、副作用発現の有無により生存期間に差はあるのかどうかなども、今後検討されることを期待しています。

牧山今回、ATTRACTION-2試験の2年間の追跡結果が報告されたことで、改めてNivolumabの有用性を再確認できたと私自身も感じています。特に長期的な生存が実際に数字として提示されましたので、患者さんへの説明にも生かしていけると思います。
 さて、実臨床ではさまざまな臨床像の患者さんに遭遇しますが、ここからはより具体的にNivolumabを使うべき患者の見極め等について、まずは加藤先生よりご提示いただきたいと思います。

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