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新潟県立がんセンター新潟病院で、大腸癌を専門として日々治療に励んでいる消化器外科医です。当院は日本で最も古くから“がんセンター”という名称を使った病院でありながら、現在は私の知る限りではスタッフ1人あたりの担当患者数は最も多いがんセンターであるようです。当院の大腸癌担当の外科医はスタッフとしては私と大学からの出張医1名の計2名で、昨年度、一昨年度は年間200例の新患大腸癌患者を受け入れ、年間240件の手術をこなしています。当院に赴任してから7年間で1,200例(1,500件)を超える症例の手術をさせていただきました。これに加え、術後患者のfollow
up、補助化学療法、転移再発症例に対する抗癌剤治療から癌終末期医療までこなすためには、いかに効率よくトラブルを少なく治療するかにかかっており、なおかつ高いレベルの治療内容を維持するために何をすべきかに日々頭を悩ませています。
多くの大腸癌症例を治療していくなかで、私の興味をそそり、やる気を起こさせてくれる部分としての1つ目は再発例に対する切除後の“生存率”です。肝転移や肺転移、さらに腹膜転移まで起こしても、病巣が切除されればかなりの確率(他の癌腫ではあり得ない高い確率)で根治例が存在します。これは外科医として最も達成感を味わえる部分ではないかと感じています。
2つ目は最近どんどんと進化していく“抗癌剤治療”です。効果の高い抗癌剤が次々と開発&発売され、医療者側もそのスピードに付いていくのに苦労をするほどです。私は、進行・再発癌のfirst
lineとしてはエビデンスを重視し、現在はIS/5-FUとLV/UFTを中心に治療を行っています。
大腸癌に対する抗癌剤の高い奏効率と延命効果は曲げられない事実です。しかし、一方でもう1つ曲げられない事実は、抗癌剤治療では本当の意味のCR、根治の確率はほとんどないということです。やはり根治を得るために切除に勝る治療法はありません。これらの事実を組み合わせるとどうなるか。それは進行癌、転移再発癌に対する術前抗癌剤治療にたどり着きます。効果のある抗癌剤で転移を含めた腫瘍を縮小、減少させ根治の期待ができる切除に持ち込む。ここが現在私が最も興味をもっている部分の1つで、2年程前からこの命題に取り組んでいます。
現在、高度進行大腸癌症例に対する術前抗癌剤治療としての効果についてphase II の臨床試験を進めています。現在は試験続行中ですが、なかなか良い感触を得ています。このプロトコールに限らず、安全で高い奏効率、高い根治切除率を得られる治療法を求めてこれからも進んでいきたいと考えています。
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