地域基幹病院における最高のがん診療を目指して | 江川 智久 先生


 恩賜財団済生会横浜市東部病院は、平成19年3月30日に開院した横浜市東部地域(横浜市鶴見区・神奈川区)の地域基幹病院です。16疾患別センターと5診療科を備える554床(一般病床:460床)を有し、地域のがん診療はもちろんのこと救急医療、循環器疾患、脳血管疾患などの急性期医療を担っています。病院の2階部分の角スペースには床面積270.93 m2 の化学療法センターが存在します。13床のリクライングと3床のベッドを有し、すべての病床が窓に接し、採光も良好で、快適に薬物療法が受けられるようなレイアウトになっています。
 ソフト面でも、専任看護師4名、専任薬剤師3名を配置し病院のがん診療の中核的センターのひとつです。手術センターは、10室の手術室を配備し、腹腔鏡手術に威力を発揮する天吊り式モニター、ハイビジョン対応の最新の腹腔鏡システム、選び抜かれた鉗子類など充実した装備を誇ります。これらのハードにより最高のがん診療を提供する体制はできたと自負しています。
 様々ながん種においてエビデンスが蓄積されガイドラインも整備され、標準的治療も確立されてきました。腹腔鏡手術、分子標的薬をはじめ、次々と臨床の場に登場する新薬を使った薬物療法など、がん患者さんに提供するべき治療モダリティーは増えています。
 最高のがん診療を提供するには、標準的治療の実践はもちろんのこと、新しい有望な臨床研究的な治療に関しても習得する必要があります。全国規模の第III相試験に積極的に参加して、自らがエビデンスの作成に寄与することもこれからの基幹病院には求められるでしょう。最高のがん診療を行う病院として、これらの使命を達成するためには、医師や看護師、薬剤師、CRC、DMなど多種にわたる人材が潤沢に必要と考えられます。当院ではその考えのもと人材の確保を進めていますが、まだ十分といえないのが現状です。
 地域のがん診療は、地域がん診療連携拠点病院(二次医療圏に1施設)にがん患者さんを集約し、一定レベルのがん診療を提供できるシステムの構築へと方向付けされています。その指定を目指し、ハード・ソフト面を充実させていくことが、地域基幹病院として最高のがん診療を提供していく基盤と考えられ、現在それに向け病院一丸となって努力しています。
 一部の特殊治療を除いたほぼすべてのがん治療が、自分の住み慣れた地域で、最高のレベルで受けることができ、最善の結果を患者さんにもたらすことができればベストだと考えます。そのために、今後も努力していきたいと思います。




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