広島大学臨床腫瘍学講座(当教室)は、がん臨床試験の支援組織であるNPO法人ひろしまがん治療開発推進機構の寄附講座として開設されました。当教室は、ゲノム・遺伝子解析に基づくテーラーメード医療など最新のがん臨床試験を通して新しいがん治療法を広島から世界へ発信しています。大学病院内では、がんチーム医療カンファレンス(Oncology
Meeting)を毎週開催しています。これは各科の専門医師、薬剤師、看護師が一堂に会して、ある1人の患者さんに最適の治療法は何か、エビデンスに基づいて参加者全員で知恵を絞る場です。すでに米国では抗がん剤の添付文書に遺伝子多型に対する警告が掲載されています。20世紀が大量生産・大量消費の時代とすれば21世紀は個の時代といわれています。医療従事者にとってはone
of themでも患者さんと家族にとってはonly oneです。
ところでどんな分野にも本物と偽物があります。「自称oncologist」は必ずしも本物ではありません。自信満々に患者さんや家族に「私の治療法は世界一です」と平気で言ったり、セカンドオピニオンを求めると「二度と来るな」と怒る医者には要注意です。詰所や病室で患者さんや家族が不安がることを大声で話すのも言語道断です。がん患者のメンタルケアは、病名の告知に始まり、病状説明、治療法の選択、臨床試験への参加の同意(インフォームドコンセント)、予後の可能性、緩和ケアまで、がん診療すべてに関係しており、サイコオンコロジーという新しい学問に発展しています。看護師さんなどコメディカルの医師に対する評価はかなり正確です。それとなく看護師さんに医師の評判を尋ねるのも本物と偽物の見分け方の1つです。
我々の目指す本物のoncologistは、一臓器に偏らずすべての癌腫の疫学、診断、治療にまで精通し、分子標的薬の機序(分子生物学)にも造詣が深い医師であり一個人として信頼できる人です。
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