|
およそ60%の症例で、神経毒性のためにoxaliplatin継続が困難となる。CONcePT (Combined Oxaliplatin Neurotoxicity Prevention Trial)試験は、time-to-treatment Failure (TTF)を一次エンドポイントにoxaliplatinの間歇的投与でFOLFOX + bevacizumab (BV)の治療期間を延長できないかを検証することを目的に開始された(間歇的投与群:IO [Intermittent oxaliplatin]、通常投与群:CO [continuous oxaliplatin])。また、二次エンドポイントとしてoxaliplatin投与前後にCa-gluconate 1gとMg-sulfate 1g(CaMg製剤)を投与することによる神経毒性軽減効果を検討するため、二重盲検法により以下の4群に分けた。
(IO ± CaMg)× (CO ± CaMg)
適格基準は、測定可能病変があり、PS 0-1、神経障害なしの転移を有する結腸・直腸癌症例とした。CO群はmFOLFOX7(oxaliplatin 85mg/m2、LV 200mg/m2、5-FU 2,400mg/m2×46h) + BV(5mg/m2)を2週間毎に投与した。IO群ではoxaliplatinを8サイクル毎にon/offした。
2×2のオリジナルデザイン(CaMg製剤 vs placebo(PL))は、139例で無作為化が中止され、続く140症例目から40症例は全症例にCaMg製剤が投与された。一次エンドポイントはTTFであり、割り付けから何らかの理由(病勢悪化、死亡、毒性など)で治療中止となるまでの期間と定義した。
本試験は2005年2月に開始されたが、CaMg 製剤投与群の奏効率がPL群に比べて低いことが示唆されたため、2007年6月、IDMCにより終結された。患者背景(139例)は、年齢の中央値63歳、PS 0 53%、男性55%、結腸80%であり、前治療として補助化学療法が22%に施行されており、12%は放射線療法を受けていた。
奏効率はCO + PL群21%、CO + CaMg群36%、IO + PL群45%、IO + CaMg群43%であった。
TTF中央値はCO群4.2ヵ月、IO群5.6ヵ月であり(p=0.0025, HR=0.58, 95%CI 0.41-0.83)、CaMg製剤投与の有無でみるとCO + PL群4.0ヵ月、CO + CaMg群4.6ヵ月、IO + PL群6.9ヵ月、IO + CaMg群4.6ヵ月であった。
PFSはCO群7.3ヵ月、IO群12.0ヵ月であった(p=0.048, HR=0.53, 95%CI 0.29-0.99)。
grade 3-4の神経毒性は、CO群16例(24%)に対してIO群7例(10%)であった。
下図は、PNQ(patient neurotoxicity questionnaire)による末梢神経障害の程度を各群別に経時的に示したグラフである。Item 1、すなわち慢性の神経障害については、矢印に示すように17サイクル以降、CO+PL群で他の3群と比較して程度が高くなっている。
下表は、8サイクル以上施行した症例について、同じくPNQによる末梢神経障害の程度を比較したものである。Item 1(慢性神経障害)については、IO群と比較してCO群でその程度が高く、また、CaMg製剤には神経障害を軽減する効果が認められる。一方、Item 2(急性神経障害)に関しては、Item 1以上にL-OHPを間歇投与とした場合の軽減効果が大きい反面、CaMg製剤投与の効果はみられていない。
CONcePT試験は早期終結となったが、本試験の一次エンドポイントであるTTFについて、IO群のCO群に対する優越性が示された。
Oxaliplatinを計画的に休薬するレジメンは、神経毒性軽減の観点から一次治療としてBVとの併用療法を行う際に役立つものと考えられる。
OPTIMOX1は、2007年米国臨床腫瘍学会年次集会で有意差を認めないもののPFSについてはOPTIMOX2に優ることが示された(学会レポート)。本試験のIO群は、OPTIMOX1にBVを加えたレジメンである。IO群は、CO群と比較して有意に長いTTFを示したが、その理由は神経毒性が比較的軽微であるためと考えられる。また、CaMg製剤の神経毒性軽減効果はCO群では明確であったが、IO群では明らかでなかった。以上より、L-OHPを間歇投与にすれば急性および慢性の末梢神経障害の双方を軽減でき、CaMg製剤の併用は不要であると考えられる。OPTIMOX1は、CaMg製剤の投与を省略してもcomplianceを向上し、結果としてTTFを延長するレジメンと解釈される。
(レポーター:野澤 寛 コメント:大村 健二)