Abstract #LBA2

KRAS status and efficacy in the first-line treatment of patients with metastatic colorectal cancer (mCRC) treated with FOLFIRI with or without cetuximab: The CRYSTAL experience.


E. Van Cutsem,et al.

背景と目的

第III相試験であるCRYSTAL試験(学会レポート)の解析により、大腸癌の一次治療としてFOLFIRIにcetuximabを加えることにより、PFS、RR、治癒的外科切除率が有意に向上することが明らかになった。最近、cetuximab単独あるいはirinotecanとの併用療法による大腸癌の治療効果が、K-RASのmutationの状態と関連していることが明らかになってきた。このためCRYSTAL試験をレトロスペクティブに解析することにより、腫瘍のK-RASのmutationとFOLFIRI + cetuximabの治療効果との関連について解析した。

対象と方法

CRYSTAL試験において保存されていた1,198例中の587例の腫瘍組織を用いた。Genomic DNAは標本スライドから直接に抽出し、codon12/13のK-RAS mutationを解析した。




結果

組織からK-RASの解析が可能であった集団は、試験におけるITT集団の解析と対応していた。K-RASのmutantは540例中192例の35.6%に認められた。
K-RAS のwild typeの患者において、FOLFIRI + cetuximabがFOLFIRIに対して有意にPFSを延長した(p=0.0167; ハザード比0.68 [95% CI, 0.051-0.934])。Best overall response(最良総合効果)も、FOLFIRI + cetuximab群で59.3%とFOLFIRI群の43.2%に対して有意に良好であった(p=0.0025)。





これに対し、K-RAS mutantの患者においては、FOLFIRI + cetuximabはFOLFIRIに対してPFSも延長せず(p=0.75; ハザード比1.07 [95% CI, 0.71-1.61])、Best overall responseもFOLFIRI + cetuximab群で36.2%とFOLFIRI群の40.2%に対して改善を認めなかった(p=0.46)。

結論

CRYSTAL試験の結果は、大腸癌患者に対してFOLFIRIにcetuximabを加えることによりPFSにおける上乗せ効果を認めたが、この効果はK-RAS wild typeの患者に認められる。K-RAS mutation患者はcetuximabによる上乗せ効果が認められなかった。このK-RASのmutationの状態は、grade 3以上の有害事象には影響を認めなかった。

コメント

K-RASが大腸癌の標準的一次治療における初めてのmolecular markerであることを明らかにした大規模試験である。本学会ではOPUS試験における同様の解析もなされており(#4000)、K-RAS wild typeの大腸癌患者においてFOLFOXにcetuximabを加えることによりPFSとRRにおける上乗せ効果を認めたが、mutant患者では認められなかった。両試験の結果により、K-RASのmutationの状態がテイラーメイド治療につながる可能性が示された。

(レポート・コメント:高石 官均   監修:寺島 雅典 )