Abstract #4514

進行胃癌における5-FU単独、CPT-11+CDDP併用(CP)、S-1単独を比較した無作為化第III相試験(JCOG 9912試験)の最新の結果

Updated results of randomized phase III study of 5-fluorouracil (5-FU) alone versus combination of irinotecan and cisplatin (CP) versus S-1 alone in advanced gastric cancer (JCOG 9912).


Nozomu Fuse, et al.

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背景

JCOG 9912試験は進行胃癌患者を対象とする3群の無作為化第III相試験である。本試験の目的は、5-FU持続注入(5FUci)に対するCPT-11+CDDP併用(CP)の優越性と、5FUciに対するS-1の非劣性を証明することであった。2007年の米国臨床腫瘍学会年次集会で発表された主要解析では、5FUciに対するS-1の非劣性が証明された(2007年 米国臨床腫瘍学会年次集会 Abstract #LBA4513)。しかし、多重性の調整を行ったところ、S-1とCPについては5-FUに対する統計学的に有意な優越性が認められなかった。今回の多変量解析の目的は、JCOG 9912試験の長期成績を明確にすることである。

対象と方法

進行胃癌患者704例を5-FUci群(234例)、CP群(236例)、S-1群(234例)に無作為に割り付けた。このうちS-1群の1例は不適格であった。
統計学的デザインでは5-FUci群の6ヵ月OSが50〜55%、1年OSが25〜30%と仮定された。CP群は5-FUci群を10%上回ると予想され、S-1群の非劣性の限度は−5%(HR<1.16)と予想された。
対象患者の大部分は男性であり(531例)、患者特性は3群間で同等であった。

結果と結論

最新の解析結果でのOSおよびハザード比(HR)は、最初の解析結果とほぼ同等であった。2年OSは5-FUci群が14%、CP群が18%(HR 0.82、p=0.019)、S-1群が21%(HR 0.83、p=0.023)であった。

Updated overall survival (OS)

多変量解析をベースライン変数で調整したところ、いずれのHRも単変量解析の値とほぼ同じであった。

Multivariate analysis for OS

OSのサブグループ解析(HR、相互作用のP値を含む)を下記に示す。

Subgroup analysis for OS

多変量解析では、転移部位が2箇所以上であること、PSが1以上であること、標的病変を有することが、生存期間短縮と関係していることが明らかになった。調整HRは、CP群が0.79(0.65-0.95、p=0.014)、S-1群が0.80(0.66-0.96、p=0.017)であった。ベースライン因子間や投与群間に有意な相互作用は認められなかった。
これらの最新結果により、S-1単独療法が進行胃癌患者の新たな標準レジメンとなる可能性があるという当初の結論が確認された。これらの結果は、進行胃癌患者でのCP療法について今後検討を重ねる価値があることを示すものである。

コメント

我が国で行われた胃癌に対するpivotal trialのJCOG9912の長期follow-upの報告である。2007年の米国臨床腫瘍学会年次集会での報告では、S-1は5-FUに対して非劣性は証明されたものの優越性は証明されず、CPの5-FUに対する優越性も証明されなかった(2007年 米国臨床腫瘍学会年次集会 Abstract #LBA4513)。今回、全症例が2年以上経過した時点の解析では、S-1の5-FUに対する優越性も証明され、進行胃癌に対する標準治療としてのS-1の位置づけが改めて確認された。同時に、CPの5-FUに対する優越性も証明され、特に標的病変が存在する症例や、腹膜播種のない症例においてCPの有効性が高い傾向が認められた。今後、CPに関しても、このような対象症例を中心として臨床的有用性を再評価すべきであると思われる。
Discussionでは「S-1は東アジアでは標準治療だが、欧米では有効性が確認されていない。CPの有効性はプラチナの効果を確認したものだ」とコメントされており、今ひとつ盛り上がりに欠ける印象を拭えない。胃癌の化学療法は今や東高西低の時代であり、我が国の患者に対するevidenceは、これからも我が国独自で確立していくべきであろう。

(コメント・監修:寺島 雅典)