Abstract #4025

L-OHPによる急性・慢性神経毒性に対するCaMg静脈投与の効果についての評価:プラセボ対照第III相試験の結果

Intravenous Calcium and Magnesium (CaMg) Reduces Chronic, But Not Acute Neurotoxicity Associated With Oxaliplatin: Results From a Placebo-controlled Phase III Ttrial.


Axel Grothey, et al.

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背景と目的

L-OHPの用量制限毒性である神経毒性は、しばしばL-OHPベースの化学療法の早期中断につながる。これまで、GamelinらのCaMg投与によるL-OHPの神経毒性軽減についてのレトロスペクティブな研究が報告されている(Gemelin L, et al.: Clin Cancer Res., 2004)。我々は、術後補助化学療法としてのL-OHP療法における神経毒性に対するCaMgの予防効果について、NCCTG trial N04C7を行ったが(2008年 米国臨床腫瘍学会年次集会 Abstract #4009)、CaMgによる神経毒性の軽減については確認できなかった。

方法

Stage II/III結腸癌の術後補助化学療法としてFOLFOX療法12サイクルの施行を予定している104例を、下記の2群に無作為に振り分けた。

  CaMg群: FOLFOX+ [Ca1g, Mg1g; L-OHPの投与前と投与後に静注]
  プラセボ群: FOLFOX+プラセボ

神経毒性の評価スケールは、NCI-CTC、oxaiplatin-specific scale、PRO QOL(患者アンケートによるアウトカムレポート)を用いた。なお、急性神経毒性についてはL-OHP投与後の1-4日間、慢性毒性については全治療期間とその後の経過に評価を行った。

  一次エンドポイント:Grade 2以上の慢性神経毒性の発現率
二次エンドポイント:急性神経毒性の発現率、QOL
結果

最終的にCaMg群の50例、プラセボ群の52例、合計102例で評価が可能であった。
骨格筋の痙攣(筋痙攣症候群)はCaMg群で激減した(P=0.002)。しかし、その他の急性神経毒性は、CaMg群とプラセボ群の間で、冷たいものに対する敏感度、喉の不快感などのいずれについても、全サイクルにおいて差は認められなかった。

Acute Symptoms on Day 2 of Cycle 1 Mean PRO-scores (SD)

対照的に、慢性神経毒性についてはCaMa群で大きく減少し、指の違和感(P=0.02)、ボタンのかけにくさ(P=0.05)、骨格筋の痙攣(P=0.01)などが改善した。

Chronic, Cumulative sNT (Examples)
結論

CaMgの投与によって慢性神経毒性は軽減されたが、急性神経毒性については変化が認められなかった。CaMgは、L-OHPによる慢性神経毒性を軽減する支持療法として推薦できる。

コメント

神経毒性がL-OHPを用いるレジメンの中断理由になることはしばしばある。したがって、神経毒性を軽減するための対策、支持療法についての報告は多い。現在、最も有効な方法はL-OHPの一時中断で、そのためにOPTIMOX1が考案された。CaMgにL-OHPの神経毒性軽減効果があると報告されて久しい感がある。しかし、患者への負担と比較して、効果が希薄であるというのが現場での印象であった。なお、本研究の結果からCaMgの投与を推奨するにはサンプルサイズが小さすぎる感がある。この類の事象について信頼できるエビデンスを得るためには、より多くの症例を集積した二重盲検試験の施行が望ましい。

(コメント・監修:大村 健二)