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演題速報レポート

Colorectal Cancer
Abstract #3510
切除不能進行・再発大腸癌初回治療例に対するPanitumumab + FOLFOX4療法とFOLFOX4療法の無作為化比較第III相試験 (PRIME試験): 最終報告
Final results from PRIME: Randomized phase III study of panitumumab (pmab) with FOLFOX4 for 1st-line metastatic colorectal cancer (mCRC).
Jean-Yves Douillard, et al.
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背景
 PRIME試験ではKRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌初回治療例に対するFOLFOX4療法へのPanitumumabのPFS (progression-free survival) における上乗せ効果が証明された1)。今回、事前に計画されていた登録終了30ヵ月後におけるPFSおよびOS (overall survival) について解析した。
対象と方法
対象: PRIME試験1) に登録された症例。
評価項目:PFS (中央判定)、OS、RR (response rate)、安全性
結果
 Panitumumab + FOLFOX4群に546例、FOLFOX4群に550例が登録され、KRAS 野生型例は各325例、331例であった。KRAS 野生型の患者背景では肝転移単独例が各19%、17%とPanitumumab + FOLFOX4群にわずかに多い傾向であったが、大きな隔たりはなかった。
 KRAS 野生型のPFSはPanitumumab + FOLFOX4群で10.0ヵ月、FOLFOX4群で8.6ヵ月 (HR 0.80; 95%CI:0.67-0.97; p=0.01) とPanitumumab + FOLFOX4群で有意に良好であったが、KRAS 変異型では各7.4ヵ月、9.2ヵ月 (HR 1.27; 95%CI:1.04-1.55; p=0.02) と有意に不良であった。
WT KRAS: Primary Vs Final Analysis
 OS中央値はKRAS 野生型では各23.9ヵ月、19.7ヵ月 (HR 0.88; 95%CI:0.73-1.06; p=0.17) とPanitumumab + FOLFOX4群で良好な傾向を認めたものの、有意差はなかった。KRAS 変異型では各15.5ヵ月、19.2ヵ月 (HR 1.17; 95%CI:0.95-1.45; p=0.15) とPanitumumab + FOLFOX4群で短い傾向にあった。
OS by KRAS Mutation Status Final Analysis
 後治療ではKRAS 野生型FOLFOX4群の25%に抗EGFR抗体薬が投与されていた。後治療にIrinotecan (CPT-11) またはOxaliplatin (L-OHP)、5-FUが投与されていたのはKRAS 野生型で各59%、65%、KRAS 変異型で60%、70%とPanitumumab + FOLFOX4群で低い傾向にあった。
 RRはKRAS 野生型で各57%、48% (OR 1.47; 95%CI:1.07-2.04; p=0.02)、KRAS 変異型で40%、41% (OR 0.98; 95%CI:0.65-1.47; p=0.92 ) とKRAS 野生型ではPanitumumab + FOLFOX4群で有意に良好であった。
 KRAS 野生型の肝転移単独例における肝転移巣根治切除率は、Panitumumab + FOLFOX4群が28% (17/61例) と、FOLFOX4群の18% (10/57例) に比べて高い傾向にあった。長期のフォローアップが必要ではあるが、根治切除未施行例のMST (median survival time) は23.6ヵ月 (54イベント/91例) 、根治切除施行例のMSTは未到達 (3イベント/27例) であった。
Complete Resection Rate for Patients With WT KRAS Tumors and Liver-only Disease
 有害事象については既報と同様であり、KRAS 野生型でgrade 2-4の皮膚毒性を認めた症例は、grade 0-1の症例と比較してPFS、OS、RRが有意に良好であった2) (今回はKRAS 変異型の報告なし/学会レポート参照) 。
結論
 KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌初回治療例に対するPanitumumab + FOLFOX4療法はFOLFOX4療法と比較してPFSおよびRRを有意に改善した。
コメント
 2009年のESMOで発表されたPRIME試験の最終報告である。同様の抗EGFR抗体薬であるCetuximabとFOLFOX4療法の第II相比較試験 (OPUS試験3)でも認められたように、KRAS 野生型症例に対するPFS、RRの上乗せ効果を証明した。
 一方、OSはPanitumumab併用群で良好な傾向を認めたものの有意差が示せなかったのは、二次治療以降の治療が影響している可能性も考えられる。前回、皮膚毒性との関連が報告されていたが2)、今回は変異型に関する報告はなされていなかった。また、肝転移単独症例における化学療法後根治切除施行例では、著明な生存転帰の改善が得られていた。
 今後は肝転移単独症例における積極的なconversion therapyの導入による治療成績の検証が必要と思われた。
(レポート: 山ア 健太郎 監修・コメント: 寺島 雅典)
Reference
1) Siena S, et al.: 2010 Gastrointestinal Cancers Symposium: abst #283 [学会レポート
2) Douillard J-Y, et al.: 2010 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3528 [学会レポート
3) Bokemeyer C, et al.: 2010 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3506 [学会レポート]
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