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その他の消化器癌に関する注目演題
胃癌に関する注目演題
#LBA4000:REAL3試験
進行食道・胃腺癌におけるPanitumumab併用化学療法の第II/III相試験
――胃癌治療における抗EGFR抗体薬の行く先とは
室:次はREAL3試験です。結城先生、概要をお願いします。
結城:英国ではEpirubicin、L-OHP、Capecitabineの3剤併用療法 (EOC療法) が進行食道・胃腺癌の標準治療の1つになっていますが、EOC療法に対するPanitumumabの上乗せ効果を検証した試験です。Panitumumab併用群ではL-OHPとCapecitabineの減量が行われ、今回はmodified EOC (mEOC) 療法として用いられました。その結果、主要評価項目のOSは残念ながら試験群と対照群とが逆転してしまい、ネガティブ試験となりました[図15]。PFSもmEOC+Panitumumab群のほうが不良となっています[図16]。
室:監修の寺島先生はどう思われましたか。
寺島:期待していただけに、大変残念な結果でした。化学療法の用量が低いことがOSを悪くしている一番の原因ではないかと考えます。また、L-OHP、CapecitabineともにPanitumumabとの相性がよくないように思いますので、本結果をもって進行食道・胃腺癌に対する抗EGFR抗体薬が完全に否定されるわけではないと思います。
吉野:大腸癌ではXELOXとCetuximabも毒性の面で相性が悪いですからね。
室:本試験では毒性にはそれほど差がありませんでしたので、L-OHPとCapecitabineの減量が要因と考えられますね。
大村:過去に、5-FUに対するLVの上乗せ効果を検証した試験でも同様のことがありました。5-FU群と5-FU/LV群では実際の5-FUの投与量に開きがあり、なかなか統一見解が得られなかったのですが、5-FUの用量を揃えた結果、LVの上乗せ効果が明らかになったのです。併用する化学療法剤を減量してしまうと、本来の上乗せ効果がみられなくなる可能性があります。
室:減量せざるを得ないレジメン自体にも無理があり、問題なのかもしれません。
山﨑:大腸のポスター発表では、細胞株レベルでL-OHPと抗EGFR抗体を併用すると、KRAS 変異型ではL-OHPの腫瘍細胞抑制効果が減弱するという報告がありました52)。毒性だけではなく、何らかの相互作用があるのかもしれません。
室:今後、胃癌に対するPanitumumabの有用性を検証するのは厳しいでしょうか。
中島:胃癌に対する抗EGFR抗体薬の方向性は、EXPAND試験53)の結果が出たときに、今回の結果と合わせて総合的に決まっていくのではないかと思います。
室:ただ、両方ともunselective populationでの試験ですね。
寺島:外科の立場からすると、EGFRは胃癌の予後不良因子ですので、ターゲットとして検討していかなければいけないと思います。抗EGFR抗体薬と併用する薬剤や治療ラインなど、色々検討すべきでしょう。
中島:本試験とEXPAND試験でバイオマーカー検索を行い、EGFR遺伝子異常などのバイオマーカーによるサブグループで相違が示されれば、新たなターゲットに対する次の戦略が立てられるのではないかと思います。
室:今後、バイオマーカーの検討が重要になるということですね。本試験の結果だけで抗EGFR抗体薬は胃癌に対して効果がないと判断するのは時期尚早であるという結論でした。
Lessons from #LBA4000
- 進行食道・胃腺癌におけるEOC療法に対するPanitumumabの上乗せ効果は証明できず、mEOC+Panitumumab群でOS、PFSが不良であった。
- mEOC+Panitumumab群では、化学療法のL-OHPとCapecitabineが減量されていたことが効果減弱の要因であると考えられた。
- 本結果から胃癌における抗EGFR抗体薬の有用性の有無を結論づけるのは時期尚早であり、今後はバイオマーカーの検討が重要と考えられる。