Abstract #3522
Stage III結腸癌に対する術後補助化学療法の治療効果への年齢と合併症の影響:4つのランダム化比較試験における個人データに基づくプール解析
Impact of age and medical comorbidity (MC) for oxaliplatin on adjuvant treatment outcomes for stage III colon cancer (CC): a pooled analysis of individual patient data from four randomized controlled trials.
Abstract #3523
Stage III結腸癌における再発後生存期間へのoxaliplatinベースの補助化学療法の効果:4つのランダム化比較試験における個人データに基づくプール解析
Effect of oxaliplatin based adjuvant therapy on post-relapse survival (PRS) in patients with stage III colon cancer: a pooled analysis of individual patient data from four randomized controlled trials.
背景
Stage III結腸癌におけるFluoropyrimidineベースの術後補助化学療法へのOxaliplatin (L-OHP) の上乗せ効果は、DFS (disease-free survival) やOS (overall survival) において比較臨床試験で証明されている。今回、年齢と合併症が術後補助化学療法の治療効果に与える影響(#3522)およびL-OHPを含む術後補助化学療法のPRS(post-relapse survival)に与える影響(#3523)についての解析結果が報告された。
対象と方法
- ・NSABP C-08試験、XELOXA試験, X-ACT試験, AVANT試験の4試験に参加したstage III結腸癌患者(any T、N1あるいはN2、M0)4,819例のプール解析(Bevacizumab投与患者は除外した)(図1)
図1
- ・合併症: Charlson Comorbidity Index (CCI) および NCI Combined Index (NCI) に
よるLow (≦1)とHigh (>1)の分類にて評価 - ・年齢: 70歳未満および70歳以上で評価
- ・PRS: 再発から死亡までの期間として評価
結果
- ・患者背景: 検索リンパ節個数以外に群間差はみられなかった。
- ・追跡期間中央値: NSABP C-08試験36ヵ月、AVANT試験50ヵ月、XELOXA試験83ヵ月、X-ACT試験74ヵ月であった。
#3522
DFSとOSに対する単変量解析では、LV/5-FUへのL-OHPの上乗せ効果は、年齢、合併症の有無にかかわらず有意に認められた。ただし、70歳以上の症例では、L-OHPの上乗せ効果が少なかった [HR (70歳未満→70歳以上): DFS 0.68→0.77, OS 0.62→0.78] (表1)。
表1
多変量解析では、LV/5-FUへのL-OHPの上乗せ効果と年齢および合併症などの因子との間に相関は認められなかった (表2)。
表2
XELOX/FOLFOX群におけるgrade 3/4の有害事象は、CCIスコアによる影響は認められなかったが (≦1: 54% vs. >1: 56%) 、70歳以上の患者では高値となった (70歳以上: 59% vs. 70歳未満: 52%)。また、重篤なgrade 3/4の有害事象において、XELOX/FOLFOX群とLV/5-FU群における群間差、CCIスコアによる影響はともに認められなかったが、年齢別解析では70歳以上の患者では高値となった (70歳以上: 25% vs. 70歳未満: 14%)。
#3523
PRS解析対象は再発結腸癌患者であり、XELOX/FOLFOX群757例、LV/5-FU群744例であった。PRSのKaplan-Meier曲線は2群とも同様に推移し(HR 0.94; 95%CI: 0.82-1.07; p=0.33)(図2)、PRS中央値はXELOX/FOLFOX群で23.8ヵ月、LV/5-FU群で21.7ヵ月であった。
多変量解析においても、2群間の有意差は認められなかったが(HR 0.92; 95%CI: 0.82-1.05; p=0.23)、サブグループ解析により70歳未満群では70歳以上群に対して、N1群ではN2群に対してPRSの有意な延長が認められた (表3)。
図2
表3
再発後の治療内容はXELOX/FOLFOX群でL-OHPの使用が少なく、Irinotecan、Bevacizumabの使用が多かった (表4)。
表4
なお、XELOX/FOLFOX群において、再発後のL-OHP使用の有無によるPRSの有意差は認められなかった(HR 1.03; 95%CI: 0.77-1.38; p=0.85)。
結論
L-OHPのLV/5-FU療法に対する上乗せは、年齢、合併症に関わらずDFSとOSに有意差が認められた。ただし、70歳以上の症例ではその効果は小さく、grade3/4の有害事象の頻度は高かった。術後補助化学療法におけるL-OHP使用の有無はPRSに影響を与えなかったが、年齢とN stageはPRSに有意に影響を与えていた。これらの解析は、術後補助化学療法としてのXELOX/FOLFOXは、stage III結腸癌患者において標準治療であることを支持するものとなった。
コメント
統合解析の対象が同一なので、2つの報告を敢えて1報にまとめて頂いた。結論として、合併症や高齢の如何にかかわらず、L-OHPの上乗せ効果が認められた。「高齢である」あるいは「合併症がある」といった因子のみで、stage III大腸癌の術後補助化学療法にL-OHPを使用しないという選択はすべきではない。ただし、本統合解析の対象症例は、臨床試験に適格と判断された症例であること、そして上乗せ効果が非高齢者に比べ小さいこと、さらに有害事象の程度及び頻度から鑑みると、臨床現場においては必ずしも一般化されるものではない。ディスカッサントは、高齢者に対しては臓器機能や患者の希望を考慮の上、患者全体を包括的に評価して、個別に治療方針を決定すべきと総括した。
高齢となるにしたがい、暦年齢と生物学的年齢に差が出てくる。高齢者に対する抗がん治療の適応には、生物学的年齢が重要な因子である。また、高齢者特有の精神的背景といった問題もある。症例毎に適切な評価を行うことが重要であり、その結果、過不足ない治療が適切に行われるべきである。
また、L-OHPのPRSに及ぼす影響についても、これまで結論が出されていなかったが、今回の統合解析でPRSに対する影響はないことが明らかにされた。これらの結果より、stage III大腸癌の術後補助化学療法として、FOLFOX療法あるいはXELOX療法を標準として、症例毎に背景因子を十分に評価した上でレジメンを選択、そして適切に実施することが勧められる。
(レポート : 中島 貴子 監修・コメント : 佐藤 温)