演題速報レポート

Abstract #4046

進行消化器系低分化型神経内分泌癌 (advanced PDNEC of digestive system) に対する全身化学療法に関する多施設共同後ろ向き研究

Multicenter retrospective analysis of systemic chemotherapy in poorly neuroendocrine carcinoma of digestive system

Nozomu Machida, et al.

対象と方法

 2000年4月から2011年3月の間に、日本の23施設において進行消化器系低分化型内分泌癌に対して化学療法が施行された患者を対象とし、診療録より情報を収集し、レトロスペクティブに解析した。対象の詳細は下記の通りである。

  • 組織学的に確認されたPDNEC / 小細胞癌 / 複合型内分泌 - 外分泌癌で内分泌の成分が低分化である症例、もしくは組織学的に確認された神経内分泌腫瘍で臨床経過にて急速に増悪を示した症例
  • 消化管 (GI) または肝胆膵 (HBP) 原発
  • 術後補助化学療法および放射線療法、動脈塞栓術の治療歴なし

結果

 患者背景は表1に示す通りである。一次治療の内容はIrinotecan+Cisplatin (CDDP) 療法[IP]が62.0%と最も多く、次いでEtoposide (VP-16)+CDDP療法[EP]が18%、Fluoropyrimidineベースの化学療法が15.0%、Gemcitabineベースの化学療法が3.9%、VP-16+Carboplatin (CBDCA) 療法[CE]が1.6%であった。


表1

 OS (overall survival) の中央値は11.5ヵ月であった。原発臓器別では消化管が13.0ヵ月、肝胆膵が7.9ヵ月であった (詳細は図1参照)。


図1

 一次治療のレジメン別の比較では、IP群の臨床転帰はEP群に比して良好であり、OS中央値はIP群13.0ヵ月 vs. EP群7.3ヵ月 (p<0.0001)、PFS (progression-free survival) 中央値は各々5.2ヵ月 vs. 4.0ヵ月 (p=0.033)、RR (response rate) は各々50% vs. 27% (p<0.001) であった。
 IP群 / EP群のうち56% (206例中116例) の患者で二次治療が行われた。OS中央値は 6.3ヵ月、PFS中央値は 2.1ヵ月、RRは11%であった。
 また、IP群 / EP群 (183例) における予後不良因子は「GI原発 (vs. HBP原発; HR=0.58)」ならびに「治療開始時のLDH >ULN (vs. 基準値; HR=0.65)」であった。

結論

 IP療法は消化管原発の患者において、EP療法は肝胆膵原発の患者において最もよく用いられていた。原発臓器ならびに治療開始時のLDH値は独立した予後予測因子であった。また、二次治療の効果は限定的であった。

Abstract #4015

進行消化管低分化型神経内分泌癌 (advanced PDNEC of digestive tract) 305例における効果予測因子と予後因子の解析: The NORDIC NEC study

Predictive and prognostic factors for treatment and survival in 305 patients with advanced gastrointestinal poorly differentiated neuroendocrine carcinoma: The NORDIC NEC Study

Halfdan Sorbye, et al.

対象と方法

 2000年1月から2009年4月の間、ノルウェーの12施設において進行消化管低分化型神経内分泌癌と診断された患者で、組織学的にPDNECと確認され (Ki-67>20%)、消化管原発、もしくは原発不明 (CUP) であるが消化管への転移が主病変である症例を対象とした。診療録より情報を収集し、レトロスペクティブに解析した。

結果

 解析対象となった305例のうち、化学療法が施行された患者は252例であった (表2)。


表2

 一次治療の内容はVP-16+CDDP療法 [EP] が51%、VP-16+CBDCA療法[CE]が27%、CE+Vincristine (VCR) 療法が11%であった。多くの場合、CBDCAの使用は施設の規定によるものであった。
 化学療法が施行された患者のOSの中央値は 11ヵ月、RRは31%、SDは33%であった。原発臓器別のOS中央値は食道14ヵ月、胃11ヵ月、膵15ヵ月、結腸8ヵ月、直腸10ヵ月、原発不明11ヵ月であった (図2)。一方、best supportive careのみの患者53例のOS中央値は1ヵ月 (95%CI: 0.3-1.8ヵ月) であった。


図2

 治療レジメン別の臨床転帰はほぼ同等であった。OS中央値はEP群12ヵ月、CE群で11ヵ月、CE+VCR群では10ヵ月、PFS中央値はいずれも4ヵ月、RRは各々31%、30%、44%であった。Ki-67指数が55%未満の患者では、55%以上の患者に比してRRが16% vs. 43%と不良であったが、OS中央値は15ヵ月 vs. 10ヵ月と良好であった。
 252例中84例 (33%) の患者で二次治療が行われ、RRは18%、SDは 33%であった。
 化学療法を施行された170例における予後不良因子は、「PS不良 (PS 0/1 vs. 2)」「大腸原発」「治療開始時の血小板数 >400×109」ならびに「治療開始時のLDH値 >UNL」であった。

結論

 消化管PDNECは予後不良であり、全身状態が悪化する前に遅滞なく化学療法の施行を考慮すべきである。Ki-67指数55%未満の患者は55%以上の患者に比してRRは低いものの、OSは良好であった。PS不良、大腸原発、治療開始時の血小板数ならびにLDH値の上昇は、化学療法が実施された患者における最も重要な予後不良因子であった。

コメント

 これまで本サイトでは、神経内分泌腫瘍に関する演題をあまり取り上げてこなかった。しかしながら、NECは消化器癌治療の臨床現場でしばしば経験する疾患であり、また化学療法が大きな役割をもつ疾患でもある。今回、レトロスペクティブな解析ではあるが多数症例での検討が2つ報告されたことから、臨床上有意義であると判断して取り上げることとした。以下にNECについての簡単な解説を加える。
 神経内分泌細胞に由来する腫瘍 (Neuroendocrine neoplasm) は、神経内分泌腫瘍 (NET:Neuroendocrine tumor) と神経内分泌癌 (NEC:Neuroendocrine carcinoma) に大きく分類される。分類は核分裂像およびKi-67指数に基づいて行われる。NETは低~中悪性度の高分化型の腫瘍である一方、NECは悪性度の高い低分化型の腫瘍であり、治療方針が異なる。
 低分化型神経内分泌癌 (PDNEC:Poorly differentiated neuroendocrine carcinoma) についてはNCCNより治療ガイドラインが示されており、転移を有するPDNECの治療は小細胞肺癌の化学療法レジメンに準ずる。今回の2報告より、一次治療ではプラチナベースのレジメンが標準的であり、二次治療のレジメン開発を要する現状が明らかになった。
 NECの概念が明確化されたのはまだ最近のことであり、今後情報が集積され、開発が進んでいくことが期待される。

(レポート:中島 貴子 監修・コメント:佐藤 温)

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