2011年9月23日〜27日にスウェーデン・ストックホルムにて開催されたThe European Multidisciplinary Cancer Congress 2011 - ESMOより、大腸癌や胃癌などの注目演題のレポートをお届けします。演題レポートの冒頭には、臨床研究の第一線で活躍する監修ドクターのコメントを掲載しています。
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大腸癌
Abstract #6144
KRAS 野生型切除不能進行・再発大腸癌に対するPanitumumab + Irinotecan 併用療法を検討した第II相試験: GERCOR試験
Phase II Study of Panitumumab With Irinotecan for Patients With KRAS Wild-type Metastatic Colorectal Cancer (mCRC) Refractory to Standard Chemotherapy - A GERCOR Study
Thierry André, et al.
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Expert's view
ガイドラインに欠けていたピースを埋める重要な研究
山田 康秀 先生 国立がん研究センター中央病院 消化管腫瘍科消化管内科
 CetuximabをIrinotecan (CPT-11) 不応例に対し使用する場合、BOND試験1) (CPT-11不応例に対するCetuximab単剤とCetuximab + CPT-11併用療法の無作為化第II相試験) の結果から、CPT-11との併用で奏効率が高く、progression-free survival (PFS) が長い。Panitumumabでは、BOND試験に相当する試験がなく、Panitumumab単剤とbest supportive care (BSC) との無作為化第III相試験の結果から、抗癌剤不応例に対してはNCCNガイドラインでもPanitumumab単剤が推奨されているのみである。
 本試験は単アームの第II相試験結果であるが、抗癌剤不応例に対するPanitumumab + CPT-11併用療法の有効性が示された点で重要であり、実臨床では本併用療法をCPT-11不応例に対する治療オプションとして考えてよい。KRAS /BRAF /NRAS すべての野生型に対する奏効率は42% (21/49例)、PFS中央値は7.7ヵ月、overall survival中央値は14.8ヵ月と良好な結果がみられた。KRAS , BRAF , NRAS のいずれかに変異のある症例では、奏効率は0% (0/19例)、PD率は68% (13/19例)、PFS中央値は2.1ヵ月であった。BRAF 変異例では、4例すべてがPDであった。既報2) の結果と併せると、BRAF KRAS 同様、抗癌剤不応例では無効予測因子と考えられる。現実的には、無効予測因子とされる遺伝子変異を保険適応として調べることが可能となるのは、各遺伝子変異に対し有効な薬剤が開発されたときなのかもしれない。
背景と目的
 GERCOR試験は3rd-line治療におけるIrinotecan (CPT-11) へのPanitumumabの併用効果を評価することを目的とした試験である3)。今回はKRAS BRAF NRAS 遺伝子変異の有無による解析結果を報告する。
対象と方法
 対象と方法は既報の通りである。Panitumumab (6mg/m2) とCPT-11 (180mg/m2) は2週毎の投与とした。主要評価項目はobjective response rate (ORR) とし、期待値を30%とした。KRAS に加え、BRAF NRAS 遺伝子変異の測定を行った。
結果
 各施設でKRAS 遺伝子野生型と判定された69例 (うち1例が除外) が登録され、セントラルラボでKRAS BRAF NRAS の測定が行われた。すべてが野生型の症例 (All wild-type) は49例 (72%)、いずれかの変異を有する症例 (Any mutation) は19例 (28%) であり、その内訳はNRAS 変異が5例 (7%)、BRAF 変異が4例 (6%)、KRAS 変異 (codon 13変異例はなし) が10例 (15%) であった。
 KRAS およびNRAS BRAF 遺伝子変異の有無によるORRはAll wild-typeで42.0%、Any mutationでは0%であった (表1)
表1: Tumor Response
 また、PFSの中央値はAll wild-typeで7.7ヵ月、Any mutationでは2.1ヵ月 (HR=3.34, 95% CI: 1.54-7.25, p<0.0001)、OSの中央値はそれぞれ14.8ヵ月、4.6ヵ月 (HR=2.11, 95% CI: 0.98-4.55, p=0.016) であり、いずれもAll wild-typeにおいて有意な延長が認められた。
図1: Survivals
結論
 各施設においてKRAS 野生型と判定された68例のうち、セントラルラボでAny mutationと判定された症例は19例 (28%) であった。Any mutationで病勢進行 (PD) を示した患者はAll wild-typeの3.3倍と高値であった。本結果より、標準的化学療法に不応な切除不能進行・再発大腸癌において、KRAS に加えてBRAF NRAS 遺伝子変異の有無を測定することは、Panitumumab + CPT-11療法によるベネフィットを得られる患者を同定するのに有用であると考えられた。
Reference
1) Cunningham D, et al.: N Engl J Med. 351(4): 337-345, 2004 [PubMed][論文紹介
2) De Roock W, et al.: Lancet Oncol. 11(8): 753-762, 2010 [PubMed
3) Chibaudel B, et al.: 2011 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3573 [学会レポート
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