2010年 消化器癌シンポジウム 演題速報レポート 消化器癌治療の広場

2010年 消化器癌シンポジウム

演題レポート Presentations

Abstract #283
切除不能大腸癌における1st-line治療としてのpanitumumab+FOLFOX4療法とFOLFOX4療法を比較したランダム化第III試験: PRIME試験

Randomized phase III study of panitumumab (pmab) with FOLFOX4 compared to FOLFOX4 alone as first-line treatment (tx) for metastatic colorectal cancer (mCRC): PRIME trial.

Salvatore Siena, et al.

FOLFOX+Panitumumab療法は1st-line治療として有効である

瀧内 比呂也先生

 これまで行われた切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-line治療の重要な臨床試験としては、AVF2107g、NO16966そしてCRYSTALが挙げられる。もはや標準的治療の位置づけではないIFLをコントロールにおいたAVF2107g以外の2つの試験は、PRIMEと同様、PFSを一次エンドポイントとした試験である。
 今回のPRIME(KRAS 野生型)のデータとNO16966およびCRYSTALの後解析(KRAS 野生型)データを比較すると、それぞれのPFS(中央値)がFOLFOX+panitumumab=9.6ヵ月、FOLFIRI+cetuximab=9.9ヵ月、FOLFOX/XELOX+bevacizumab=9.36ヵ月であり、各レジメン間において大きな差はないと考えられる。
 今後我が国においても、1st-line治療でいずれの抗体薬も使用可能となった場合、実際の医療現場では患者の病態に応じた適切なレジメン選択に迫られることになる。そのレジメン選択の一助となるような新たなバイオマーカー研究や、conversion therapyをテーマにした臨床研究のさらなる発展に期待したい。

 
背景

 完全ヒト型抗EGFR抗体であるpanitumumab(Pmab)は、切除不能進行再発大腸癌における単剤療法として承認された。今回報告されたPRIME試験は、切除不能進行再発大腸癌の1st-line治療におけるFOLFOX4±Pmab療法の有効性と安全性を検討するためのオープンラベル無作為化第III相試験である。

方法

 対象は、切除不能進行再発大腸癌と診断されたECOG performance status(PS)0-2の18歳以上の患者で、oxaliplatinを含む化学療法歴のない症例1,183例である。Pmab+FOLFOX4療法群(593例)とFOLFOX4単独群(590例)に無作為に割り付けた。Pmabは6mg/kgを2週間に1回投与した。
 一次エンドポイントは、progression-free survival(PFS)、二次エンドポイントはoverall survival(OS)、objective response rate(ORR)、安全性などである。

結果

 1,183例のうち93%でKRAS statusが確認され、KRAS 野生型は60% (656例)、KRAS 変異型は40%(440例)であった。
 一次エンドポイントであるPFS(中央値)は、KRAS 野生型において、Pmab併用群9.6ヵ月、 FOLFOX4単独群8.0ヵ月と有意に延長した(HR=0.80、p=0.02)。一方、KRAS 変異型では、Pmab併用群7.3ヵ月、FOLFOX4単独群8.8ヵ月であった(HR=1.29、p=0.02)。
 二次エンドポイントについては、OS(中央値)は、KRAS 野生型においてPmab併用群23.9ヵ月およびFOLFOX4単独群19.7ヵ月であり(HR=0.83、p=0.07)、KRAS 変異型では、15.5ヵ月および19.3ヵ月であった(HR=1.24、p=0.07)。また、ORRは、KRAS 野生型において、Pmab併用群55%およびFOLFOX4単独群48%であり(p=0.07)、KRAS 変異型では40%および40%であった(p=0.98)。

 Grade3/4の有害事象としては、皮膚障害、下痢、低マグネシウム血症などが、KRAS statusにかかわらずPmab併用群で多くみられた。Infusion reactionは、Pmab併用群で1%未満であり、Grade4以上は認められなかった。
結論

 KRAS 野生型の切除不能進行再発大腸癌において、Pmab併用群で一次エンドポイントであるPFSの延長がみられた。また、二次エンドポイントであるOSおよびORRにおいても、Pmab併用群で改善傾向がみられた。一方、原因は不明であるがKRAS 変異型においては、Pmab併用群のほうが単独群を下回る結果となった。
 Pmab+FOLFOX4療法における有害事象は予測の範囲内であり、忍容性の高いレジメンであることが示された。