2010年 消化器癌シンポジウム 演題速報レポート 消化器癌治療の広場

2010年 消化器癌シンポジウム

演題レポート Presentations

Abstract #401
Stage II/III結腸癌患者における術後補助化学療法へのoxaliplatin併用の検討:
NSABP C-07試験の長期フォローアップでの生存分析

5-FU and leucovorin (Lv) with or without oxaliplatin (Ox) for adjuvant treatment of stage II and III colon cancer: Long-term follow-up of NSABP C-07 with survival analysis.

Greg A. Yothers, et al.

70歳未満の女性にFLOX療法の有効性は限定されるという結果に慎重な解釈が必要

吉野 孝之先生

 L-OHPの上乗せは70歳未満の若年者に限定した効果とするACCENTデータベースの報告 (McCleary N, et al.: 2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会, #4010) があるが、一方でNO16968試験では、高齢者でも若年者と同様にL-OHPの上乗せありと報告されている (Haller DG, et al.: 2010年 消化器癌シンポジウム, #284) 。単に高齢という理由でL-OHPの上乗せはないとする明確な根拠がない現状で、今回、性別による有効性の違いが報告された。しかし、MOSAIC試験では性差に関係なく有効で、男性のほうがむしろ女性より有効とされている。
 このようなことから、70歳未満の女性にFLOX療法の有効性は限定されるという結果を、実地診療に導入することは避けるべきであろう。今後複数の臨床試験で再現性を確認する必要がある。

 
背景

 Stage II/III結腸癌患者における術後補助化学療法としての5-FU/LV+oxaliplatin (L-OHP) の併用療法 (FLOX療法) を検討したNSABP C-07試験では、disease-free survival (DFS) のハザード比が0.80 (95%CI: 0.69-0.93、p=0.0034) で、FLOX療法を施行した群で20%のリスクリダクションが得られたと、3.5年のフォローアップの成績で報告されている1) 。今回は、本試験の二次エンドポイントであるoverall survival (OS) の追跡結果が報告された。

対象と方法

 2000年から2002年に登録されたstage II/IIIの結腸癌患者2,409例を、5-FU/LV (RPMI) 群1,209例とFLOX群1,200例に無作為に割り付けた。

  • RPMI群:
5-FU (500mg/m2 iv bolus, day1) + LV (500mg/m2 iv, day1) を週1回、6週間投与、2週間休薬、計3サイクル施行
  • FLOX群:
RPMIレジメンに第1、3、5週目にL-OHP 85mg/m2 ivを追加、6週間投与、2週間休薬、計3サイクル施行

 一次エンドポイントはDFS (再発、二次発癌、死亡を含む) であり、二次エンドポイントはtime to recurrence (TTR) およびOSであった。年齢別解析では、ACCENTデータベースの解析結果に基づき、70歳で層別化した。

結果

 追跡期間中央値は7.05年であった。解析対象の2,409例のうち、29%がstage II、16%が70歳以上、43%が女性であった。
 FLOX群はRPMI群に比べ、DFSおよびTTRでは有意な改善がみられた (DFS; HR=0.81 [95% CI: 0.71-0.92]、p=0.0017/TTR; HR=0.81 [0.69-0.94]、p=0.0062) 。一方、OSでは有意差は認められなかった (HR=0.88 [0.75-1.03]、p=0.1173) 。
 また、治療レジメン別および年齢別の解析の結果、DFS (1.45 [1.04-2.02]、p=0.028) とOS (1.51 [1.04-2.20]、p=0.032) で有意な相関がみられたが、TTRでは相関が認められなかった (1.41 [0.93-2.14]、p=0.10) 。レジメン別、年齢別、性別の解析では、70歳未満の女性患者群においてDFS、OS、TTRで有意な相関がみられたが、他の群では有意差が得られなかった。
 Grade3以上の好中球減少、悪心・嘔吐、脱水の発現頻度は、年齢や性別にかかわらず、FLOX群で高かった。

結論

 FLOX群におけるDFSおよびTTRの改善は7年間にわたり持続されていたが、OSには有意な差は認められなかった。年齢および性別についての解析からは、70歳未満の女性患者におけるFLOX療法の有効性を示唆する結果が示された。

Reference
1) Kuebler JP, et al.: J Clin Oncol. 25 (16): 2198-2204, 2007