2010年 消化器癌シンポジウム 演題速報レポート 消化器癌治療の広場

2010年 消化器癌シンポジウム

演題レポート Presentations

Abstract #429

抗EGFR抗体関連の皮膚障害: 1st-line治療としての切除不能進行再発大腸癌の
panitumumab+FOLFIRI療法の第II相試験(20060314)データ分析のレビュー

Epidermal-growth Factor Receptor (EGFR) Inhibitor-related skin Toxicity: Review of Primary Analysis Data from a PhaseUStudy (20060314) of Panitumumab with FOLFIRI in the First-line Treatment of Metastatic Colorectal Cancer (mCRC).

Meinolf Karthaus, et al.

1st-lineにおけるpanitumumab+FOLFIRI療法の安全性が確認された

小松 嘉人先生

 本試験はpanitumumabの1st-lineにおけるFOLFIRIとの併用の第II相試験である。本報告では、特に安全性と副作用について検討されており、本療法は、1st-lineでも安全に実施できることが示された。
 最も多い副作用は皮膚障害であり、KRAS statusに関わらず生じることが示された。これは、cetuximab併用のCRYSTAL試験と同様の結果であった。さらに、responderであればKRAS statusに関わらず、Grade3/4の強い皮膚障害が出現していた。
 既報のcetuximabの試験では、強い皮膚毒性が出る症例ほど生存期間が延長したと報告されており、皮膚毒性がKRAS 野生型症例の効果を予測する1つのバイオマーカーとなることが期待された。しかし、本試験からはKRAS statusに関わらず、重篤な皮膚毒性が出現することから、皮膚障害の出現の意義に関しては、さらなる検討が必要になるものと思われる。

 
背景

 完全ヒト型抗EGFR抗体であるpanitumumab (Pmab)は、切除不能進行再発大腸癌のKRAS 野生型患者における単剤療法での有効性が示されている。
 今回、切除不能進行再発大腸癌に対する1st-line治療としてのPmab+FOLFIRI療法の効果とKRAS statusとの関連をプロスペクティブに解析するとともに、QOLやアドヒアランスに影響を与える、抗EGFR抗体関連の皮膚障害に関して検討を行った。

対象と方法

 対象は、切除不能進行再発結腸・直腸癌と診断された、ECOG PS 0-2、前治療歴のない18歳以上の患者である。Pmab(6mg/kg)+FOLFIRI療法を2週に1回施行した。評価項目は下記の通りである。

  • 一次エンドポイント
奏効率(Objective response rate; ORR)
  • 二次エンドポイント
Disease control rate、time to progression(TTP)、duration of response、duration of stable disease、time to response(TTR)、time to treatment failure(TTF)、progression-free survival(PFS)、安全性
結果

 治療期間の中央値は、KRAS 野生型で6.9ヵ月、KRAS 変異型で5.8ヵ月であった。
 151例(98%)の患者で皮膚障害が認められ、そのうちGrade3/4は55例(36%)であった。最初に皮膚障害が現れる期間の中央値は、KRAS 野生型では8日、KRAS 変異型では10日であった。
 皮膚毒性の主な有害事象は、Rash、皮膚乾燥、ざ瘡様皮疹であり、KRAS statusを問わず、responder群でGrade3/4の有害事象が多くみられた。

表1 KRAS statusと皮膚障害、奏効の関連

結論

 本解析により、FOLFIRIとPmabの併用療法は忍容性が高く、皮膚障害についてもPmab単剤療法でみられる皮膚障害と同様であることが示された。また、KRAS statusにかかわらず、皮膚障害が発現することが示された。

Reference
1) Lacouture M et al. 2009 Gastrointestinal Cancers Symposium (Abstract 291)

【関連情報】

2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会 速報演題レポート #4085
「転移を有する大腸癌に対する一次治療としてのpanitumumab+FOLFIRI併用療法の第II相試験(20060314)の最新解析」