2011年 消化器癌シンポジウム 演題速報レポート 消化器癌治療の広場

2011年 消化器癌シンポジウム

演題レポート Presentations

Abstract #477
遠隔転移を有する大腸癌患者における二次治療としてのFOLFIRI + Bevacizumab療法とFOLFIRI + Panitumumab療法の多施設共同オープンラベル無作為化比較第II相試験:
SPIRITT試験の安全性報告

Pooled Safety Results from SPIRITT: A Multicenter, Open-label, Randomized, Phase 2 Study of FOLFIRI with Panitumumab or Bevacizumab as 2nd-line Treatment in Patients with Metastatic Colorectal Cancer (mCRC)

J. Randolph Hecht, et al.

  

FOLFIRI + Panitumumab療法とFOLFIRI + Bevacizumab療法の安全性の検討

金澤 旭宣 先生

 NCCNのガイドラインにおいてはBevacizumabの併用は一次治療のみの選択肢となっているが、実際には一次治療でFOLFOX or XELOX + Bevacizumab療法が施行されている症例では、二次治療にFOLFIRI + Bevacizumab療法が行われていることも多く、我が国のガイドラインにも二次治療ではBevacizumab併用化学療法が記載されている。FOLFIRI + Panitumumab療法はOxaliplatinベースの一次治療が行われたKRAS 野生型の症例の二次治療において、FOLFIRI単独療法に比較して有意に無増悪生存期間 (progression-free survival: PFS) を延長することが報告されている1)。このSPIRITT試験においては、FOLFIRI + Bevacizumab療法と比較し、その効果を比較・検討することになっている。本試験の一次エンドポイントはKRAS 野生型患者におけるPFSであるが、二次エンドポイントの1つである安全性についての報告が今回の発表となっている。それぞれの治療個別の有害事象についての報告ではないものの、そのプロファイルは想定範囲内のものではあり、全体として安全性については期待通りの結果が得られそうではある。しかしながら、最終的にはそれぞれの治療の有害事象とそのGradeの分布などの詳細な報告が待たれる。また何よりも、本来の1次エンドポイントであるPFSの結果に注目したい。

 
背景と目的

 現在、治癒切除不能な大腸癌患者においてBevacizumabを含むレジメンにて進行が認められた場合、前向きかつ無作為化にて検討したデータはないものの、その多くは二次治療においても継続してBevacizumabを併用した治療が実施されている。
 近年、KRAS 野生型の治癒切除不能な大腸癌患者の二次治療において、FOLFIRI + Panitumumab療法がFOLFIRI単独療法と比較してPFSを有意に延長することが第III相試験にて報告された1)。本試験は、1st-lineとしてOxaliplatin (L-OHP) ベースの化学療法とBevacizumabの併用療法を施行されたKRAS 野生型患者において、2nd-lineとしてのFOLFIRI + Bevaizumab療法とFOLFIRI + Panitumumab療法の有効性および安全性を評価する試験である。今回は安全性データの集計結果を報告する。

対象と方法

 L-OHPベースの化学療法にBevacizumabを併用した一次治療に不耐あるいは進行が認められた患者を対象とし、FOLFIRI + Bevacizumab群とFOLFIRI + Panitumumab群に無作為に割り付けた。Bevacizumabの投与量は各施設の標準用量、Panitumumabは6mg/kgとし、両群とも2週毎の投与とした。


  • 一次エンドポイント

KRAS 野生型患者におけるPFS

  • 二次エンドポイント

奏効率 (objective response rate: ORR)、全生存期間 (overall survival: OS)、安全性、患者自己評価 (patients oriented report: PRO)


結果

 2010年3月9日のデータカットオフ時点で、登録予定277例のうち216例が登録された。基準を満たした214例 (99%) のうち175例 (81%) は投与終了、39例 (18%) が投与継続中であった。
 全Gradeの有害事象は194例 (91%) に認められ、38例 (18%) で投与中止となった。また、治療に関連した有害事象は189例 (88%) であり、28例 (13%) で投与中止となった。
 患者の10%超に認められた有害事象は、下痢121例 (57%)、悪心117例 (55%)、疲労104例 (49%)、嘔吐63例 (29%)、皮疹62例 (29%)、好中球数減少61例 (29%)、便秘58例 (27%) などであった (表)

表 患者の10%超に認められた有害事象 (全Grade)
結論

 安全性プロファイルは、切除不能な大腸癌患者に対する二次治療として、FOLFIRIと抗VEGF抗体あるいは抗EGFR抗体を併用した場合に予測される範囲内のものであった。本試験は2010年12月に患者登録が終了しており、現在追跡中である。

Reference
1) Peeters M, et al.: J Clin Oncol. 28 (31): 4706-4713, 2010 [PubMed