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Stage II/IIIの食道扁平上皮癌に対するCisplatin + 5-FUと予防的リンパ節領域照射による術前補助化学放射線療法の第II相試験:2年追跡の結果
Phase II Study of Neoadjuvant Chemoradiotherapy with Cisplatin plus 5-fluorouracil and Elective Nodal Irradiation for Stage II/III Esophageal Squamous Cell Carcinoma: A 2-year Follow up
Ken Kato, et al.
切除可能な食道癌に対する術前化学放射線療法の有効性は?
結果は、93.5%とほとんどの症例で治療が完遂でき、治療関連死亡・術後合併症割合も許容範囲内であった。治療成績についてはさらに長期成績を追う必要があるが、2年PFSは71.0%、2年OSは77.4%とJCOG9907試験を上回る結果であった。しかし、既報のDocetaxel + 5-FU + CDDP (DCF療法) による術前補助化学療法の第II相試験の短期成績(2年PFS 74.5%、2年OS 88.0%)2) と比較すると、本試験はpCR割合が極めて良好であるものの、短期生存成績は術前DCF療法と同等かやや少し下に感じられる。
本邦では、既に局所制御の高いD3郭清が手術の標準となっており、術前に放射線療法を加えることによるメリットは、リンパ節郭清を十分に行わない欧米と比較すると小さいのであろうか。既にJCOG食道がんグループにて、術前のCF療法、DCF療法、化学放射線療法の3群比較第III相試験 (NExT試験) 3)が開始されており、結果が待たれる。
Stage II/III食道扁平上皮癌の術前補助化学療法において、本邦では5-FU + Cisplatin (CDDP) が標準治療とされているが1)、その治療成績は満足できるものではなく、さらなる改善が求められている。一方、術前化学放射線療法 (NeoCRT) が食道扁平上皮癌の標準治療とされている国もある4, 5)。そこで、5-FU + CDDPに予防的リンパ節領域照射を併用したNeoCRTの実用可能性が検討され、今回は追跡調査の結果が報告された。
対象は、20〜75歳、ECOG PS 0-1で、切除可能な食道胸部扁平上皮癌または腺扁平上皮癌患者で、cTNM分類のstage II/III (cT4除く)、化学療法および放射線療法歴のない症例であった。NeoCRTとして、5-FU (1,000mg/m2, day 1-4) + CDDP (75mg/m2, day 1) を4週毎、放射線療法 (総線量41.4Gy、1.8Gy×23回) を行った (図1)。
主要評価項目は、プロトコール治療完遂率であり、副次評価項目は、OS、PFS、奏効率 (RECIST ver.1.0)、病理学的CR (pCR) であった。帰無仮説をプロトコール治療完遂率60%とし、プロトコール治療完遂率80%を見込み、片側α=0.1、検出力80%で、必要症例数は24例であった。なお、今回の解析は最終登録から2年後に実施され、追跡期間中央値は30ヵ月であった。
主要評価項目は、プロトコール治療完遂率であり、副次評価項目は、OS、PFS、奏効率 (RECIST ver.1.0)、病理学的CR (pCR) であった。帰無仮説をプロトコール治療完遂率60%とし、プロトコール治療完遂率80%を見込み、片側α=0.1、検出力80%で、必要症例数は24例であった。なお、今回の解析は最終登録から2年後に実施され、追跡期間中央値は30ヵ月であった。
2010年7月〜2011年6月の間に33例が登録され、31例が解析対象となった。患者背景のcStageは、stage IIA (T2N0/T3N0) が2 (0/2) 例、stage IIB (T1N1/T2N1) が10 (6/4) 例、stage III (T3N1)が19例であった。
pR0切除は31例中29例に実施され、主要評価項目であるプロトコール治療完遂率は93.5% (90% CI: 81.1-98.9%) であった。RECISTによるCRは16%、PRは42%で認められ、奏効率は58% (31例中18例) であった。また、pCRは42% (31例中13例) であった。
2年PFSは71.0%、2年OSは77.4%であった (図2)。pCR達成別の解析では、2年PFSはpCR例84.6%、非pCR例70.6%であり、2年OSはpCR例84.6%、非pCR例76.5%と、いずれもpCR例で高かったが、PFS、OSともにpCR例と非pCR例の間に有意な差は認められなかった (図3)。
pR0切除は31例中29例に実施され、主要評価項目であるプロトコール治療完遂率は93.5% (90% CI: 81.1-98.9%) であった。RECISTによるCRは16%、PRは42%で認められ、奏効率は58% (31例中18例) であった。また、pCRは42% (31例中13例) であった。
2年PFSは71.0%、2年OSは77.4%であった (図2)。pCR達成別の解析では、2年PFSはpCR例84.6%、非pCR例70.6%であり、2年OSはpCR例84.6%、非pCR例76.5%と、いずれもpCR例で高かったが、PFS、OSともにpCR例と非pCR例の間に有意な差は認められなかった (図3)。
減量は、5-FU、CDDPともに11例でみられた (表1)。また、手術所見は (表2) の通りであった。
NeoCRTは、忍容性が高く有用であること示された。この治療を検証するために、局所進行食道扁平上皮癌患者に対する術前補助化学療法として、CF療法 (5-FU + CDDP)、DCF療法 (Docetaxel + 5-FU + CDDP)、およびCF + 放射線療法を比較するNExT試験 (JCOG1109) が進行中である3)。
Reference
1) Ando N, et al.: Ann Surg Oncol. 19(1): 68-74, 2012[PubMed]
2) Hara H, et al.: Cancer Sci. 2013 [Epub ahead of print][PubMed]
3) Nakamura K, et al.: Jpn J Clin Oncol. 43(7):752-755, 2013[PubMed]
4) Tepper J, et al.: J Clin Oncol. 26(7): 1086-1092, 2008[PubMed]
5) van Hagen P, et al.: N Engl J Med. 366(22): 2074-2084, 2012[PubMed]
1) Ando N, et al.: Ann Surg Oncol. 19(1): 68-74, 2012[PubMed]
2) Hara H, et al.: Cancer Sci. 2013 [Epub ahead of print][PubMed]
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