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直腸癌の術前補助化学療法:NSABP R-04試験の成熟した結果より
Neoadjuvant Therapy for Rectal Cancer: Mature Results from NSABP Protocol R-04
Carmen Joseph Allegra, et al.
直腸癌の術前化学放射線療法は簡便な経口剤のCapecitabineに
結果は、5-FU(civ)とCapeとの比較では、局所(local)/領域(regional)制御率、局所再発率、局所/領域RFS、OSともに差がなく、L-OHPの有無で比較しても、これらの項目に差は認められなかった。有害事象では、5-FU(civ)とCapeとの間では差を認めず、L-OHPの有無では、L-OHP併用群が明らかに高かった。これらの結果から、持続静注はCVの挿入やポンプを必要として煩雑であり、Capeが標準治療として置き換わり、L-OHPは術前化学放射線療法としては治療選択肢ではなくなった。今回の臨床試験の対象は現在の日本においては、腫瘍の高さに応じて全直腸間膜切除術 (TME) 単独あるいはTME + 側方郭清であるが、欧米の標準治療に倣ってTME + 化学放射線療法を施行している施設もみられる。簡便な経口剤投与の併用療法が標準治療となったことは朗報であるが、L-OHPの上乗せ効果がなかったことは、術後補助化学療法としては上乗せ効果がみられただけに意外であった。
また、多くの症例の組織が保存されており、効果予測因子などの生物学的マーカーの検索が予定されているとのことであり、個別化医療の前進に向けて、データの早期の公表が待たれる。
NSABP R-04試験の目的は、stage II/III直腸癌に対する術前化学放射線療法の標準治療である5-FU持続静注療法 (civ) + 放射線療法 (RT) 併用における、5-FUの経口フッ化ピリミジン系製剤Capecitabine (Cape) への置き換えの可能性、およびOxaliplatin (L-OHP) 併用によるRT感受性増強の可能性を検討することである。
対象は、肛門縁から12cm未満の直腸癌患者で、2004年7月に5-FUとCapeを比較する2群による試験が開始され2005年10月にL-OHP併用の有無も検討した2×2デザインにプロトコール変更された。同時に5-FUとCapeの投与スケジュールも週7日投与から週5日投与へと変更された (図1)。
主要評価項目は、追跡期間3年における局所 (local) /領域 (regional) 制御率であった。なお、局所 (local) は吻合部および骨盤、領域 (regional) は骨盤内リンパ節またはL5以下の高さの後腹膜リンパ節とした。副次評価項目は、病理学的CR (pCR)、肛門温存手術が実施された患者数、無病生存率 (DFS)、QOL、毒性などであった。
Capeと5-FUの比較では、ハザード比が0.86〜1.17であればmetするものとし、3年局所/領域制御率の差をおよそ±2%とした。また、L-OHPの追加による優越性の検討では、ハザード比0.59に対して検出力80%超とし、3年局所/領域制御率をおよそ4%の増加とした。
Capeと5-FUの比較では、ハザード比が0.86〜1.17であればmetするものとし、3年局所/領域制御率の差をおよそ±2%とした。また、L-OHPの追加による優越性の検討では、ハザード比0.59に対して検出力80%超とし、3年局所/領域制御率をおよそ4%の増加とした。
2004年7月〜2010年8月の間に1,860例が登録され1,595例 (99.2%) が、5-FU群 (5-FU + RT)、5-FU + L-OHP群 (5-FU + L-OHP + RT)、Cape群 (Cape + RT)、Cape + L-OHP群 (Cape + L-OHP + RT) に無作為に割り付けられた。4群の患者背景はバランスが取れていた。
主要評価項目の局所/領域制御率は、5-FU治療 (5-FU群 / 5-FU + L-OHP群) とCape治療 (Cape群 / Cape + L-OHP群) の間に差を認めなかった (HR=1.00, 95% CI: 0.75-1.32, p=0.98)。また、フッ化ピリミジン系製剤単独治療 (5-FU群 / Cape群) とL-OHP併用治療 (5-FU + L-OHP群 / Cape + L-OHP群) との間にも差を認めなかった (HR=0.94, 95% CI: 0.67-1.29, p=0.70) (図2)。
主要評価項目の局所/領域制御率は、5-FU治療 (5-FU群 / 5-FU + L-OHP群) とCape治療 (Cape群 / Cape + L-OHP群) の間に差を認めなかった (HR=1.00, 95% CI: 0.75-1.32, p=0.98)。また、フッ化ピリミジン系製剤単独治療 (5-FU群 / Cape群) とL-OHP併用治療 (5-FU + L-OHP群 / Cape + L-OHP群) との間にも差を認めなかった (HR=0.94, 95% CI: 0.67-1.29, p=0.70) (図2)。
OSにおいても、5-FU治療とCape治療の比較 (HR=1.00, 95% CI: 0.74-1.19, p=0.61)、L-OHP併用の有無 (HR=0.94, 95% CI: 0.68-1.16, p=0.38) ともに有意差を認めなかった (図3)。同様に、pCR率 (図4)、5年DFSにおいても、5-FU治療とCape治療の比較 (pCR率: p=0.14、5年DFS: p=0.70)、L-OHP併用の有無 (pCR率: p=0.42、5年DFS: p=0.34) のいずれも有意差を認めなかった。
5-FUおよびCapeは84〜97%の症例で、L-OHPは62〜69%の症例で、プロトコールにおける治療完遂の80%以上を達成していた。
Grade 3以上の有害事象はL-OHP併用により高い傾向がみられ、特にgrade 3/4の下痢の頻度が高かった (表1)。
Grade 3以上の有害事象はL-OHP併用により高い傾向がみられ、特にgrade 3/4の下痢の頻度が高かった (表1)。
術前化学放射線療法におけるCape療法は、5-FU持続静注療法と比較して局所/領域再発、pCR、DFS、OSともに類似しており、標準治療として確立された。一方、L-OHP併用による上乗せ効果は認められず、毒性 (下痢) はL-OHP併用で有意に高かった。