論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

1月

Dukes'B/C結腸癌患者におけるthymidylate synthaseおよびKi-67, p53の予後指標としての意義〜National Cancer Institute-National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project 共同研究

Carmen j. Allegra, et al., J Clin Oncol 21(2), 2003:241-250

 Thymidylate synthase(TS)およびKi-67, p53は、補助化学療法が奏効する結腸癌患者の識別に有用な指標であることが報告されているが、その内容は一致していない。この研究では、National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)のプロトコールC01-C04に登録された結腸癌患者のうち706例(Dukes'B 291例, Dukes'C 415例)を遡及的に検討し、これら3つの指標(TS, Ki-67, p53)のDukes'B/C結腸癌患者における予後指標としての有用性を検討した。手術単独例 275例、FU+leucovorin併用補助化学療法施行 431例であった。TS, Ki-67, p53は免疫組織染色を用いて評価した。
 5年間の経過観察により、TS, Ki-67, p53と無再発生存期間(RFS),全生存期間(OS)との関係が判明した。RFS, OSそれぞれに対するリスク比は、TS:1.46(p=0.01), 1.54(p=0.002), Ki-67: 0.76(p=0.05), 0.62(p=0.001), p53:1.49(p=0.01), 1.21(p=0.18)であった。TS強陽性例およびp53陽性例は予後不良であり、Ki-67陽性細胞が高率である腫瘍は、低率である腫瘍よりも予後良好であった。3指標間の相互関連は認められなかった。
 この遡及的研究によりTS, Ki-67, p53はDukes'B/C結腸癌患者における有意な予後指標であることが示された。しかしながら、どの指標からも、個々の患者に対する補助化学療法の有効性を予測することはできなかった。

考察

化学療法の有効性予測は今後の課題

 FU+leucovorin 療法は、Dukes'C結腸癌患者の術後生存期間を有意に延長する標準的な術後補助療法とされているが、個別の患者において本療法が有効か否かを予測する方法は確立されていない。本論文は手術単独群と術後補助化学療法施行群の合計706例のDukes'BまたはCの結腸癌患者を対象として、TS, Ki-67, p53の3指標と予後との関連を検討したものである。その結果、TS, Ki-67, p53の各々と予後との有意な関係は認められたが、術後補助化学療法の有効性の予測におけるこれら3指標の有用性を示すことはできなかった。化学療法の有効性には非常に多数の因子が関与すると推測され、microarrayを用いる癌の遺伝子プロフィール解析やSNPsによる体質診断の臨床応用が期待される領域である。

(消化器外科・大矢雅敏)

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