論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

2月

進行大腸癌に対する間欠投与法と持続投与法の比較〜多施設試験

TS Maughan, et al., Lancet 361, 2003:457-464

 進行大腸癌に対する化学療法に関しては、いつまで治療を続ければ良いかは定まっていない。専門家の間ではPDになるまでは化学療法を続行することになっているが、至適投与期間がどのくらいかは不明である。我々は今回MRC CR06trial 1)de Gramontらのレジメン:LV 200mg/m2, 5-FU 400/m2 bolus後5-FU 600mg/m2を22時間持続, 2)Lokichらのレジメン:5-FU 300mg/m2 持続投与, 3)raltitrexed 3mg/m2 q3wks, の3アームの比較試験で研究を試みた。これらの投与法を12週施行後、NC, PR以上の症例を対象としてトライアルを施行した。12週後も癌が増悪するまで持続して投与する持続投与と、12週後に一度休薬して癌が増悪してから同じプロトコールで治療を再開する間欠投与の2方法に無作為割り付けして比較した。間欠投与群では178例が化学療法を休薬し、その37%(66/178)の症例が癌が進行し治療を再開した。一方の持続投与群には176例が振り分けられた。
 治療結果は、間欠投与ではPR 10%, NC 23%、持続投与ではPR 9%, NC 11%であった。有害事象については、持続投与群で17例に重篤な有害事象が認められたが、間欠投与群では6例に重篤な有害事象を認めただけであった。両アームを通じて副作用死は1例だけであった。持続投与群では粘膜障害、手足症候群等の副作用が多く認められた。生存期間では両者に差を認めなかった。この違い以外には両者の症状、身体所見に大きな変化は認めなかった。間欠投与群での生存期間は10.8カ月、持続投与群では11.3カ月であった。1年生存率, 2年生存率は各々、間欠投与群で46%, 19%、持続投与群で45%, 13%であった。全体では両者に有意差を認めなかった(95%CI 0.69-1.09, P=0.23)

考察

抗癌剤の投与期間を検証するユニークな臨床試験

 抗癌剤の臨床試験で投与期間を比較検討した研究は極めて少ない。この論文はこの点でユニークである。この研究では12週投与後、途中休薬する間欠投与群と腫瘍が増悪するまで投与を続ける持続投与群では奏効率で両者に差を認めなかった。治療を休止しても効果に変りはなく、抗癌剤の休薬中は副作用がなく良好なQOLが得られたとしている。Harrisらの仮説では間欠投与は薬剤耐性クローンの出現を遅らせ、長期間、癌のコントロールが可能になると考えられている。当研究でも休薬後、腫瘍が増大しても再投与により腫瘍は再び縮小した。しかし、本研究は5-FU等の代謝拮抗剤の単剤のレジメンであるため、現在大腸癌化学療法の主流となっているOxaliplatin, CPT-11等の抗腫瘍薬で同じ結果が得られるかは不明である。

(化学療法科・水沼信之)

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