論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

3月

局所進行直腸癌に対する術前放射線化学療法の第II相試験(Lyon R0-4)

Jean-Pierre Gérard, et al., J Clin Oncol 21(6), 2003:1119-1124

 進行直腸癌に対する術前放射線照射の有効性を示すRCT(randomized clinical trials)は数多く報告されているが、最適なレジメンについては議論がある。この論文は、5-FUとLV(folinic acid)を併用する従来のレジメンにoxaliplatinを加えた術前放射線化学療法(FOLFOR2の放射線量を45Gyから50Gyに変更したもの)の第II相試験の結果について報告している。
 対象は2000年5月〜2001年10月に受診した切除可能進行直腸癌40例で、三次元放射線照射50 Gy/5 weeksに併せ、oxaliplatin 130mg/m2(day1), 5-FU 350mg/m2の24時間持続投与, l-leucovorin 100mg/m2(day1-5)の2サイクルを施行し、5週間後に手術を行うこととした。grade 3の好中球減少を発現した1例を除き、登録した全例で治療計画を完遂した。grade 3の有害事象を7例に認めたが、治療の延期は、好中球減少の1例のみであった。平均5週間後に、全例手術を施行した。術後の死亡は認めず、再手術は4例(10%)で、内訳は縫合不全2例、骨盤膿瘍2例であった。平均術後在院日数は13日であった。病理組織検査では、6例(15%)で癌は完全に消失しており、12例(30%)でわずかな残存を認めるのみであった。2002年3月現在、再発および遠隔転位は認めていない。
 この第II相試験の結果から、従来の術前放射線化学療法にoxaliplatinを併用しても有害事象の明らかな増加を認めず、安全性に関しては標準治療として許容範囲内であった。加えて、高い抗腫瘍効果が確認できた。この結果に基づき、ただちに第III相試験を計画すべきである。

考察

期待される放射線化学療法の確立

 進行直腸癌に対する治療として、欧米では外科的切除+放射線療法(放療)の有効性を示すRCT(randomized clinical trials)による報告が多数なされている。近年、オランダで行われたTME(total mesorectal excision)対TME+放療のRCTで、術前放療の局所制御に対する優越性が証明された。この論文を報告したグループでは、一歩進んで、従来の放化療にoxaliplatinを加えたレジメンを計画し、第T相試験で高い安全性を確認できたため、第II相試験では、さらに線量を45Gyから50Gyに増量した意欲的なレジメンを採用している。この結果、許容範囲の有害事象と高い奏効率を確認している。長期予後に関しては、今後の報告を待たねばならないが、進行直腸癌に対する治療法のひとつとして確立することが期待される。

(消化器外科・上野雅資)

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