直腸癌に対するcapecitabineおよびoxaliplatinを併用した
術前放射線化学療法の第 I/II 相試験
Claus Rödel, et al., J Clin Oncol 21(16), 2003:3098-3104
進行直腸癌に対する術前放射線照射により局所再発の頻度は10%程度に改善しているが、いまだ十分とはいえない。この論文では、従来の5-FUに代わり、capecitabineとoxaliplatinを加えた術前放射線化学療法の第I/II相試験の結果について報告している。
対象は、2001年7月〜2002年9月に受診した局所進行直腸癌または下部直腸癌32例である。方法は、放射線照射50.4Gy/6wksに加えてcapecitabine
825mg/m2(day1-14, 22-35)、oxaliplatin 50mg/m2(day1, 8, 22,
29)を投与した後に手術を行った。第I相試験でoxaliplatin 60mg/m2を投与した6例中2例でgrade 3の消化器症状を認めたため、第II相試験の投与量は50mg/m2とした。この結果、有害事象は軽度(26例中に短期間のgrade
3の下痢2例、grade 2の骨髄抑制5例)であった。手術した31例のうち、downstagingは17例(55%)に認め、病理組織学的CRは6例(19%)に認めた。T4と診断した13例中11例(85%)で治癒切除が可能であった。また、腫瘍下縁が歯状線上2cm以内の22例中8例(36%)で、肛門括約筋温存が可能であった。さらに重篤な術後合併症は認めなかった。
この方法は、安全かつ有効な治療であり、標準的な5-FUによる術前放射線化学療法と比較する第III相試験を計画すべきである。
進行直腸癌に対する有効な治療法として期待
進行直腸癌の局所コントロールを目的とした術前放射線療法の有効性は、多くの無作為化比較試験により確認されている。我々も、3年前より導入した術前照射により、進行下部直腸癌の95%以上の症例で、括約筋温存術が可能となっている。この報告では、大腸癌の化学療法として現在最も期待されているcapecitabineとoxaliplatinを併用した術前放射線化学療法のレジメンを採用している。第I相試験で、oxaliplatinは50mg/m2が至適投与量であるとされ、この量を用いた第II相試験では、downstaging率, pCR率, T4切除率、肛門括約筋温存率などの点で高い有効率を確認している。また、その有害事象も許容範囲であった。長期予後に関しては、今後の報告を待たねばならないが、進行直腸癌に対する治療法のひとつとして期待したい。ただし、日本人に適用する場合は、有害事象の程度が異なる可能性もあり、改めて臨床試験を行う必要があると考えられる。
(消化器外科・上野雅資)