論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

8月

前治療を有する大腸癌に対するoxaliplatinの単剤あるいは5-FU併用時における安全性、副作用解析

Ramesh K. Ramanathan, et al., J Clin Oncol 21(15), 2003:2904-2911

 米国およびカナダで行われたoxaliplatin(L-OHP)の副作用を調べる2つの連続したコホート研究である。5-FUを含む化学療法の少なくとも1レジメンに抵抗性を示した、転移性あるいは局所進行大腸癌患者を対象としてL-OHPを主体とした化学療法が5,000例以上の症例(第1コホート研究:1,370例, 第2コホート研究:3,806例)に導入された。
 研究の主目的は安全性の検証であり、治療効果のデータ集積は本研究の主目的ではなかった。しかし、試験終了までの期間(time to failure;TTF)は第1コホート研究で記録された。これら2研究ではL-OHP単剤、L-OHP+5-FU、L-OHP+5-FU+LVの併用療法が様々な投与スケジュールで試みられた。
 すべての治療レジメンの副作用は管理可能であった。第1コホート研究の全レジメンにおいてgrade 3/4の血液毒性は23.2%、grade 3/4の治療関連消化器毒性(下痢、嘔吐、粘膜炎を含む)は26.4%に出現した。grade 3の神経毒性は3.9%に認めた。同様な結果が第2コホート研究でも得られた。第1コホート研究では、83%に前治療としてirinotecanが使用されていた。TTFはL-OHP+5-FU±LVを用いた5レジメンにおいていずれも14週であったが、L-OHP単独レジメンでは有意に短かった。L-OHPのdose intensityはプロトコールでは平均36.7mg/m2/週であったが、実際はその85.5%であった(80.6%-94.3%)。L-OHPは濃厚な前治療を施行した大腸癌でもサルベージ治療として5-FU併用で安全に投与可能であった。

考察

Oxaliplatin(L-OHP)は濃厚な前治療を施行した大腸癌症例でも安全に投与可能

 本研究ではCPT-11+5-FU/LV療法等の標準療法が無効になった大腸癌症例に対するL-OHPを主体とした治療法の安全性を検討した。ほぼ全例が5-FU系の前治療を、第1コホート研究の83%がCPT-11の前治療を有していた。L-OHPの投与量は、各治療の予定スケジュールにおいて80〜94%の治療強度が保たれていた。grade 3/4の血液毒性は23.2%に消化器毒性は26.4%に出現した。副作用関連死は1%以下であった。grade 3/4の神経毒性は比較的軽度であった。喉頭、咽頭の違和感は特徴的な副作用である。投与後数時間すると冷気や冷たい飲み物で誘発され、嚥下障害、呼吸困難を来たす。しかしこれらは、投与間隔の延長、対症療法、患者教育で予防、改善が可能であった。アレルギー反応も2%と少なく、ステロイドの併用により治療継続が可能であった。すべてのプロトコール、5,000例以上の解析でL-OHPは安全に投与可能であった。

(化学療法科・水沼信之)

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