論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

8月

大腸癌のリンパ節検索個数と術後生存率との関係
−Intergroup Trialの二次調査に基づく研究−

T.E. Le Voyer et al., J Clin Oncol 21(15), 2003:2912-2919

 術後補助化学療法のIntergroup Trial(INT-0089)に登録された症例のデータを解析し、病理検索したリンパ節個数と術後生存率の関係について検討した。
 対象は、1988年8月〜1992年7月までの間に手術し登録されたstageII/IIIの結腸癌症例3,411例(うち648例はリンパ節転移陰性)である。
 結腸切除時の検索リンパ節の個数中央値は11個(1〜87個)であった。多変量解析では、リンパ節検索個数は、リンパ節転移陽性例(p=0.0001)でも陰性例(p=0.0005)でも有意な予後因子であった。さらに、リンパ節検索個数別(N0:0個, N1:1〜3個, N2:4個以上)の検討でも、やはり、リンパ節検索個数の多い群と少ない群の間で、粗生存率(N0:p<0.0001, N1:p<0.0001, N2:p=0.002)、癌特異的生存率(N0:p=0.015, N1:p<0.0024, N2:p=0.018)、無病生存率(N0:p=0.1095, N1:p<0.0007, N2:p=0.0143)の各生存率において有意差を認めた。
 以上の結果から、リンパ節検索個数は、それ自体、予後を規定しており、今後の臨床研究では、予後因子のひとつに加えるべきであると結論された。

考察

術後の重要な予後因子となるリンパ節の検索個数

 大腸癌治癒切除後の予後規定因子として、リンパ節転移の有無やリンパ節転移個数の重要性は確立されているが、近年、リンパ節の検索個数自体が予後因子として重視されてきた。検索個数が増えると、術後生存率が向上する理由としては、手術手技が優れていたためとも考えられるが、検出感度の向上により進行程度が厳密に評価され得ることがより重要な要因であろう。このため、正確な進行程度の評価基準として、検索リンパ節数を12個以上とすべきだとする勧告や、同様に14個、17個を推奨する報告がある。ただし、転移陽性リンパ節の半数以上は5mm以下であったとの報告もあり、小さなリンパ節の拾い上げは、容易ではない。今後、検査精度を向上し、かつ検査効率を向上させるためには、センチネルリンパ節を同定するなどの工夫がさらに必要となるかもしれない。

(消化器外科・上野雅資)

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