論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

9月

大腸癌の肝転移切除後の補助療法として、irinotecanの静脈内投与を
併用したfloxuridineとdexamethasoneの肝動注療法の第 I/II 相試験

N. Kemeny, et al., J Clin Oncol 21(17), 2003:3303-3309

 大腸癌による肝転移切除後の平均2年生存は65%である。leucovorin(LV)+5-FUの全身化学療法に肝動注療法を組み合わせると、その2年生存は86%に改善されることが示されている。さらに、肝動注療法と新しい抗癌剤を組み合わせた局所および全身化学療法の両面からの予後改善が検討されている。
 この研究の目的は、肝転移切除後の補助療法として、irinotecan(CPT-11)の全身投与とfloxuridine(FUDR)、dexamethasone(DEX)の肝動注の併用におけるmaximum-tolerated dose(MTD)を決めることである。
 大腸癌による肝転移切除後の96人の患者に対し、CPT-11の用量漸増を行いながら、FUDRとDEXの肝動注をday1-14で4週毎に行い、6カ月間くり返した。プライマリーエンドポイントはこのレジメンのMTDと有効性を決めることである。
 結果、CPT-11とFUDR併用療法におけるMTDは、CPT-11が2週間おき投与で200mg/m2、FUDRは0.12mg/kg×積載量÷流量であった。Dose-limiting toxicity(DLT)は下痢と好中球減少であった。26カ月の中央観察期間で、2年生存率は89%であり、MTDで治療した27例はすべて生存中である。
 このことから、大腸癌による肝転移切除後の治療法として、肝動注療法とCPT-11による全身化学療法との併用は施行可能な補助療法である。このレジメンはLV+5-FUと比較しても遜色ない効果がみられるので、今後は臨床試験を通じて、この治療法が局所コントロールを改善するのか、あるいは肝外病変を減少させるのか評価する必要がある。

考察

肝外病変をターゲットとしたさらなる臨床試験が必要

 大腸癌に対して有効な新薬が開発されているが、肝転移に対する全身化学療法単独の5年生存率は満足すべきものではない。一方、肝動注療法は奏効率がよくても、延命に寄与しないとの報告が多いが、これは肺転移などの肝外病変が予後因子となるためである。切除不能肝転移または肝切除後の予後を改善するためには、肺転移などの肝外転移をターゲットにした全身化学療法が必要であり、肝病変に対し奏効率の高い肝動注療法と全身化学療法を併用するのはより妥当な選択である。肝動注療法はカテーテル留置術と管理の煩雑さから敬遠されがちであるが、経験豊富な施設ならその実施は容易である。今回、FUDRとDEXの肝動注とCPT-11全身化学療法により89%と良好な2年生存率が得られており、さらに第III相試験でこの治療法の有用性を明らかにする必要がある。

(内科・猪狩功遺)

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