直腸癌術後再発に対するサルベージ手術の検討
-Intergroup Studyの二次調査に基づく研究-
J.E. Tepper, et al., J Clin Oncol 21(19), 2003:3623-3628
この論文では、T3, T4やリンパ節陽性の直腸癌に対する各種化学療法の効果を検討するIntergroup Trial(INT-0114)に登録された患者のうち、5-FUをベースとした術後補助化学療法に放射線療法を組み合わせた治療を行ったデータを解析し、再発に対するサルベージ手術の効果について検索した結果を報告している。
登録された大腸癌1,792例のうち1,696例が解析可能であった。観察期間中央値は8.9年で、その間に715例(42%)に再発を認めた。そのうち511例は初再発で、単一臓器にのみ再発が認められた。さらに観察可能だった500例のうち171例(34%)が治癒切除可能であった。単一臓器再発の部位は、肝、肺、骨盤で90%を占めており、このうち35%に治癒切除がなされた。再発後の5年生存率は、切除例27%に対して非切除例は6%であり、有意差(p<0.0001)を認めた。また、再発形式別に検討しても、すべての再発形式においてサルベージ手術例の予後が良好であった(p<0.001)。
今回行われたサルベージ手術は、すでに米国では標準治療となっているが、以上の結果から、この手術により27%の治癒率が得られると結論している。
サルベージ手術における精度・技術のさらなる向上に期待
本論文は、進行直腸癌術後再発治療の成績であり、局所再発を含んでいるため、切除例全体の治癒率は30%以下となっているが、良好な成績といえよう。大腸癌の再発に対するサルベージ手術の有効性は広く認められており、本邦の基幹病院での肝転移、肺転移切除後の5年生存率もそれぞれ40%を越えている。また、切除率も年々向上し、肝転移では50%に近づきつつある状況である。今後、再発後の治療成績をさらに向上させるためには、論文でも指摘されているように、PETなどの新しい検査を観察期間に組み込み、診断の精度を向上させるとともに、各施設が複雑な肝切除・肺切除ができるような高度な技術をもつことが重要であろう。
(消化器外科・上野雅資)