転移性消化管間質腫瘍(GIST)患者におけるキナーゼの変異とイマチニブの効果
Michael C. Heinrich, et al., J Clin Oncol 21(23),2003:4342-4349
消化管間質腫瘍(GIST)の多くは、イマチニブの治療標的であるKITあるいは血小板由来増殖因子受容体α関連キナーゼ(PDGFRA)の活性型変異体を発現している。今回、進行性GIST患者群におけるこれらのキナーゼ変異とイマチニブの臨床効果の関係を検討した。イマチニブの第U相臨床試験に参加した患者127例のGISTについてKITやPDGFRAの変異について検討し、その変異型と臨床的結果を関連づけた。KITの活性型変異は112例(88.2%)、PDGFRAの活性型変異が6例(4.7%)に認められた。KITの変異の多くはexon 9(23例)かexon 11(85例)に含まれていた。PDGFRAの変異体の一部を除き、全てのKITの変異型はin vitroでイマチニブに感受性があった。KITのexon 11に変異をもつGISTの奏効率は83.5%であったが、exon 9に変異をもつGISTやKIT・PDGFRAの変異を検出できないものでの奏効率はそれぞれ47.8%(p=0.0006)と0.0%(p<0.0001)であった。KITのexon 9に変異をもつGISTやKIT・PDGFRAの変異を検出できないGISTと比較して、KITにexon 11の変異をもつものではより長いevent-free survivalやOSが得られた。KITやPDGFRAの活性型変異は広く大多数のGISTで検出されており、これら癌関連タンパク質の変異状態からイマチニブの臨床効果の予測ができた。KIT変異を欠くGISTではPDGFRA変異からイマチニブの効果や感受性を説明することができた。
効果予測へ 臨床的に大きな意義
今回の結果ではGISTのイマチニブに感受性のあるKITやPDGFRAの変異と臨床上の効果が密接に関わっていることを強く示唆している(PR率:感受性あり75.7%、感受性なし0.0%)。イマチニブの臨床上の効果を予測できれば、早期に治療不応群を見出し高感受性群に集中して治療することができ、効率の良い治療につながる。また、GISTに対するイマチニブの臨床試験のデザインやその結果の解釈に大きな影響を与えると考えられる。これまでにこうした報告は乏しく、臨床的な意義は大きい。
(化学療法科・陳 勁松)