局所限局食道癌に対する複合治療の第I相試験:用量増量パクリタキセルの持続点滴とシスプラチン放射線治療の同時併用
Baruch Brenner, et al., J Clin Oncol 22(1),2004:45-52
食道癌患者に対して毎週96時間点滴のパクリタキセルとシスプラチン、放射線治療を併用した時の最大耐用量(MTD)を決めるための第I相試験の報告である。
34例の局所限局進行食道癌患者と3例の局所再発あるいは切除断端癌遺残患者を治療した。パクリタキセル10,20,30,40,60,80 mg/m2を毎週96時間持続点滴で投与し、第1-6週の毎週1日目にシスプラチン30
mg/m2と放射線照射を同時併用した(50.4 Gy)。血漿パクリタキセルの定常状態レベルを計測した。
その結果、毒性による2週間を越えた治療中断、と定義した用量制限毒性は80 mg/m2/週の用量レベルで1例の患者でみられた。主な治療中断(2週間以内の中断を含む)の理由は点滴ポートの合併症と発熱性好中球減少で、多くは80
mg/m2/週の用量で起こった。パクリタキセル60 mg/m2/週では骨髄抑制(主に好中球減少)は比較的軽度で一過性であり、口内炎、食道炎、下痢、末梢神経障害はあまりみられずほとんどがgrade
2以下だった。以上からMTDは60 mg/m2/週と決定した。MTDでのパクリタキセル定常状態濃度の平均は17.2 nmol/Lだった。その後、手術を受けた22例の患者のうち16例(73%)で完全切除(R0)が可能であり、病理学的な完全寛解率は24%だった。
シスプラチンと放射線治療の同時併用での毎週60 mg/m2/週のパクリタキセル96時間点滴治療は、局所限局食道癌患者に対して安全で耐用性のあるregimenであり、予備的ながらその効果も期待できるものである。このregimenはRadiation
Therapy Oncology Groupにより現在行われている食道癌と胃癌に対する無作為第II相試験の根拠になっている。
期待が持てるパクリタキセル化学放射線療法の報告
局所限局食道癌に対しての標準的治療は、放射線化学療法か手術と考えられている。現在の放射線化学療法はRTOG 85-01の結果に基づいた5-FU・シスプラチンの併用療法が一般的で、治癒が得られるなど一定の効果はあるものの毒性も強く、満足できる成績とはいえない。タキサン系の化学療法の併用はかねてから注目されていた。今回のパクリタキセル・シスプラチン併用放射線療法の報告では毒性が少なく、また抗腫瘍効果としても良好であり、5-FU・シスプラチン化学療法に代わる候補となる期待がもてる。しかし、あくまで第I相試験の結果であり、今後抗腫瘍効果の評価・生存に基づいた比較検討で有用性を明らかにする必要がある。
(化学療法科・陳 勁松)