論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

1月

治療歴のない転移性結腸直腸癌患者におけるfluorouracil/leucovorin、irinotecan、oxaliplatinの組み合わせによるランダム化比較試験

Richard M., et al., J Clin Oncol 22(1),2004:23-30

 進行結腸直腸癌の化学療法においては、作用機序の異なるfluorouracil(5-FU)、irinotecan(CPT-11)、oxaliplatin(L-OHP)の3種類の抗癌剤が用いられる。この試験において、転移を有する未治療の進行結腸直腸癌患者において、上記3種類の抗癌剤のいずれか2つを組み合わせた3種類のregimenの有効性と毒性を比較検討した。
 患者は同時期に、LV/5-FU(bolus)+CPT-11(IFLコントロール群)、LV/5-FU(infused)+L-OHP(FOLFOX)、CPT-11+L-OHP(IROX)の3群にランダム化され振り分けられた。primary end pointはtime to progression(TTP)、secondary end pointは奏効率、生存期間、毒性である。
 1999年5月から2001年4月までの間に、795人の患者がランダム化され振り分けられた。FOLFOX群でのTTP、奏効率、生存期間中央値はそれぞれ8.7ヵ月、45%、19.5ヵ月であった。IFL群はそれぞれ6.9ヵ月、31%、15ヵ月、IROX群はそれぞれ6.5ヵ月、35%、17.4ヵ月であり、TTPと奏効率において、FOLFOX群の方が有意に優れていた。また、FOLFOX群は、重症の嘔気・嘔吐、下痢、発熱を伴う好中球減少、脱水の頻度が有意に低かった。L-OHPを含むregimenにおいては、末梢神経炎、好中球減少が多かった。
 LV/5-FU(infused)+L-OHPのFOLFOX群はより効果的で安全であった。この治療は進行結腸直腸癌における標準治療になると考えられる。

考察

FOLFOXが進行結腸直腸癌における標準治療に

 このランダム化試験の結果は、LV/5-FU(infused)+L-OHPのFOLFOX群は、進行結腸直腸癌における標準治療になることを示唆している。L-OHPは欧州では主要な抗癌剤であるが、これまでの標準治療であるLV/5-FUとFOLFOXとの比較や、IFLとFOLFOXとの比較試験の結果が待たれる。近年、進行結腸直腸癌の標準治療はめまぐるしく変わってきている。欧米では分子標的薬剤との併用試験も行われ、新しい治療法が更新されていくものと考えられる。わが国では、結腸直腸癌の肝転移に対して、肝切除、肝動注なども積極的におこなわれ、症例によって肺切除も行われる。肝切除や肝動注は高い局所制御が得られるため、抗癌剤の比較臨床試験とともに、肝切除、肝動注などの局所治療を組み入れた試験を行い、わが国から標準治療を発信することも必要であろう。

(内科・猪狩功遺)

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