論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

2月

進行結腸直腸癌に対するoxaliplatin+capecitabineの第II相比較試験

Anthony F. Shields, M.D, Ph.D. et al., Cancer 100(3),2004:531-537

 前治療のない進行結腸直腸癌に対する、新抗癌剤oxaliplatinとcapecitabineの併用療法を、primary endpointを奏効率、secondary endpointをtime to disease progressionとして施行し、効果と有害事象を検討した。
 この二段階試験では35症例を対象に、3週間を1クールとして行われた。capecitabine 2,000 mg/m2/day(高用量)は分2とし、ほぼ12時間毎に、day 1-14の2週間連日投与した。oxaliplatinは1クールのday 1に、capecitabine内服3-6時間後に130 mg/m2を2時間点滴した。capecitabineは毒性発現に応じて、1,500 mg/m2/day(低用量)まで減量した。最初の13例が高用量のcapecitabineを投与され、奏効率は38.5%(5例)であった。しかし5例が下痢/脱水で入院治療を受けたため、追加の35例はcapecitabine 1,500 mg/m2に減量し施行した。この低用量群では奏効率は37.1%(95% CI:21.5-55.1%)、progression-free survivalの中央値は6.9ヵ月(95% CI:4.4-8.2ヵ月)であった。低用量群では4例が下痢/脱水で入院し、このうち1例が死亡した。1例に発熱を伴う好中球減少、1例に心房細動を認めた。高用量群では62%、低用量群では20%の症例に、grade 3-4の下痢(NCI-CTC ver2.0)を認めた。
 oxaliplatin+capecitabine併用療法は簡便かつ有効であり、第1次治療として他の併用化学療法と比較すべきである考えられる。

考察

oxaliplatinとcapecitabineの併用は簡便だが、
投与法に課題が残る

 新抗癌剤oxaliplatinとcapecitabineの組み合わせは今、結腸直腸癌に対して注目されている併用療法である。近年、最も有効とされるFOLFOX療法は奏効率50%を誇るが、5-FUの投与法に持続と急速静注が混在したregimenで、投与が煩雑である。米国では簡易な方法を好む傾向があるため、本研究ではLV/5-FUを経口薬capecitabineに置き換える事により、より簡易な治療が可能になるか検討している。
 本療法は、Taberneloらにより「capecitabine 2,000 mg/m2 は投与可能であり、奏効率が55%ときわめて良好な成績で、毒性も低い」と報告されていたが、本研究では奏効率が低く、毒性は強く現れた。理由は不明だが、本研究ではoxaliplatinの数時間前にcapecitabineの投与を開始した点が他の研究と異なっている。いずれにしても、日本でも早く検討が開始される事が望まれる併用化学療法である。

(化学療法科・水沼信之)

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