論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

2月

進行胃癌患者に対するFA/5-FU (持続点滴静注)+oxaliplatin 2週1回投与の第II相試験

Salah-Eddin Al-Batran, et al., J Clin Oncol 22(4),2004:658-663

 転移を有する胃癌患者に対する2週1回folinic acid(FA)/5-FU(持続点滴静注)+oxaliplatinの毒性と効果を評価した。
 前治療のない計測可能病変を持つ胃癌患者41名を試験対象とした。患者背景は男28例、女13例、年齢は中央値60歳(20-77歳)、performance status(ECOG)の中央値は1であった。患者は5-FU 2.6 g/m2(24時間持続点滴) 、FA 500 mg/m2(2時間点滴)と、oxaliplatin 85 mg/m2(2時間点滴)の投与を2週間に1回、6週間受けた。治療はPDとなるまで続けられた。
 効果の判定は6週毎に行なった。効果を評価できたのは41例中37例だった。37例中CR 1例、PR 15例で奏効率は43%であり、SD 12例(32%)、PD 9例(24%)であった。生存期間中央値は9.6ヵ月であった。全ての患者で毒性の評価が可能であったが、WHO grade 3-4の血液毒性は、好中球減少が2例(4.9%)と血小板減少1例(2.4%)であった。その他のgrade 3-4の毒性は下痢3例(7.3%)と嘔吐2例(4.9%)であった。また、grade 3の末梢神経障害や治療関連死は認めなかった。
 奏効率やtime to progression(TTP)、overall survival(OS)は、FOLFOX6などの他の併用化学療法と比べて同等であり、毒性は顕著に少なかった。2週1回投与のFA/5-FU (持続点滴静注)+oxaliplatinは、進行胃癌患者において効果があり、忍容性の高い治療法であると言える。

考察

投与量を減量することにより、効果の維持と毒性の低減を実現

 結腸直腸癌で開発されたLV/5-FU+oxaliplatin療法は、進行胃癌においてもいくつかの第II相試験が報告されており、従来のFAMTX、ELF、ECFなどに比べほぼ同等の奏効率を示すが、骨髄抑制や末梢神経障害などの毒性は無視できなかった。
 今回試みた併用療法では、5-FUのbolus投与を廃止するなど、両薬剤の投与量を減じ、その結果、毒性の発現を低く抑えることができた。特にoxaliplatin特有の末梢神経障害はgrade 3以上のものは発生しなかった。抗腫瘍効果や全生存期間も、他の併用療法と同等で良好な結果を示しており、今後に期待される療法のひとつといえる。

(化学療法科・陳 勁松)

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