食道扁平上皮癌の放射線化学療法中における腫瘍代謝活性の経時変化と治療効果
Hinrich A. Wieder, et al., J Clin Oncol 22(5),2004:900-908
食道扁平上皮癌の患者において、放射線化学療法施行中に伴う腫瘍内糖利用量の変化を経時的に評価し、腫瘍の代謝能力低下が組織学的抗腫瘍効果・患者の生存期間と関連するか検討した。組織学的に食道扁平上皮癌(cT3,cN0/+,cM0)と診断され、術前同時放射線化学療法を4週間施行後に食道切除を受ける予定の38人の患者を対象とした。フルオロデオキシグルコースを用いた陽電子放射断層撮影検査(FDG-PET)を治療前(n=38)、治療開始2週間後(n=27)、手術前(放射線化学療法後3〜4週間:n=38)に施行した。腫瘍の代謝能はstandardized
uptake value(SUV)を用いて定量的に評価した。
治療前のFDG集積中央値は9.3±2.8 SUVで放射線化学療法開始14日目の集積値は5.7±1.9 SUVに減少した(−38%±18%:P<0.0001)。術前検査ではさらに代謝能が減少し、3.3±1.1
SUV(P<0.0001)となった。組織学的奏効例(viable細胞残存10%未満)では最初の基準値から14日目のSUVの減少は44±15%であるのに対し、非奏効例では21±14%の減少にとどまった(P=0.0055)。
この時点での代謝能の変化は患者の生存期間にも関係していた(P=0.011)。また、手術前の腫瘍代謝能は組織学的奏効例で70±11%、非奏効例で51±21%の減少であった。術前放射線化学療法14日後での腫瘍代謝能の変化は有意に抗腫瘍効果や患者の生存期間と相関していた。このことは、FDG-PETは術前補助放射線化学療法中の早い段階で非奏効例を見出し得ることを示唆しており、早期に治療方針を修正することが可能になると思われる。
FDG-PETにより放射線化学療法の効果予測が早期に可能に
FDG-PETにより放射線化学療法開始後の早期に、その効果が予測できるという今回の報告の意義は大きい。進行食道癌に対する治療選択肢は手術か放射線化学療法で、後者の治療効果予測ができれば治療法の選択・途中変更が容易になり予後の向上につながる。治療開始14日目で病理組織学的奏効者の検出が感度93%、特異度88%で可能であり、代謝能低下の程度が全生存期間にも関連するという結果は大いに注目に値する。また、懸念されていた放射線性食道炎の影響は少なく、15%の症例で食道全体の集積値の上昇が見られたが腫瘍部と判別可能との報告である。今後は症例数を増やし結果の信頼性を高めることや、CTやEUSなど他の画像診断と組み合わせることにより、さらに正確な治療効果予測が可能と考えられる。
(化学療法科・陳 勁松)