オキサリプラチン、イリノテカン、5-FU、ロイコボリン全ての薬剤の併用により進行大腸癌の生存期間は延長する。
Axel Grothey, et al., J Clin Oncol 22(7) , 2004:1209-1214
oxaliplatin(Oxal)、irinotecan(CPT-11)、LV/5-FUの3剤は、単剤または併用で大腸癌に有効であり、LV/5-FUにCPT-11を加えたIFL療法、またはOxalを加えたFOLFOX療法等は現在、大腸癌に対するfirst
lineとされている。またFOLFOX療法のsecond line としてIFL療法を施行する事が可能となり、生存期間の延長が期待された。しかしこれらの3つの抗癌剤全てを使用した場合に、実際に全生存期間(OS)が延長するかどうかは検討されていなかった。そこで、最近論文化された進行大腸癌に対する重要な第III相試験を対象に、3薬剤全てを受けた患者割合、second
lineの治療を受けた患者の割合と進行大腸癌のOS中央値の関連をweighted analysisで解析した。解析対象となった第III相試験はSaltz、Douillard、de
Gramont、Goldbergらの近年の重要な7論文であった。OSの中央値は、3剤全てを治療過程のどこかで使用した症例で著明に改善していた(p=0.0008)。しかしどんなsecond
lineを使用したかは全く関連しなかった(p=0.19)。 second lineとしてOxalやCPT-11等特定の薬剤が重要とは限らなかった。さらにfirst
lineにLV/5-FU+CPT-11、LV/5-FU+Oxalを施行された群は単剤治療群より明らかに生存期間中央値が3.5ヵ月延長していた(95%CI:1.3〜5.7ヵ月,p=0.0083)。
今回の解析から大腸癌に有効な3剤全てを使用する治療戦略が進行大腸癌の生存期間を最も延長する事が示唆された。さらに有効なサルベージ治療がある現在、OSはもはやfirst
line治療の有用性を評価する適当な指標とはならない事も示唆された。
進行大腸癌の生存期間の延長は、
Oxal、CPT-11、LV/5-FUの全ての使用が必要
本研究では近年の重要な第III相試験の7論文が解析された。IFL、FOLFIRI、 FOLFOX4、FOLFOX6 、IROX(CPT-11+ Oxal)等、代表的な治療法が検討された。この解析では、LV/5-FU、Oxal、CPT-11の全ての薬剤を治療のどこかの時期に受ける事が、どのsecond line を受けるかよりOSの延長に重要であった。例えばfirst lineとしてOxalベースの化学療法(FOLFOX療法)を受ければ、second lineとしてCPT-11ベースのIFL療法やFOLFILI療法が受けられる。この2療法はLV/5-FUが含まれており、OSは延長しうる。またfirst lineとしてLV/5-FUにOxalやCPT-11を併用するFOLFOX療法やIFL療法やFOLFILI療法のOSは14.8-21.5ヵ月で、LV/5-FU単独をfirst lineとして治療した場合の12-13ヵ月より明らかに延長していた。Oxal、CPT-11、LV/5-FU全てをfirst lineとして投与する方法は78%の奏効率、生存期間は22.5ヵ月という報告があるものの、副作用やOSについての明確な結果は得られていない。本解析の結果からsecond lineが生存期間に寄与する事が証明され、進行大腸癌に対する第III相試験の指標として、OSだけでなく、progression free survival(PFS)、 time to progression(TTP)が必要と考えられた。
(化学療法科・水沼信之)