転移性結腸直腸癌に対するbevacizumabを加えたCPT-11、 leucovorin/5-FU
併用療法:多施設共同第3相RCT
Herbert Hurwitz, M.D. et al., N Engl J Med 350(23), 2004 : 2335-2342
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は血管新生において重要な蛋白である。近年ヒト化抗VEGF抗体であるbevacizumab(Avastin®)が各種の癌に対し臨床試験が実施され評価されつつある。結腸直腸癌患者に対する第2相試験ではleucovorin(LV)/5-FU+bevacizumabの有効性が報告されている。今回の多施設共同第3相RCTでは813例の未治療の転移性結腸直腸癌患者をIFL(LV/5-FU+CPT-11)+bevacizumab(5mg/kg/2weeks)群(n=402)とIFL+placebo群(n=411)とに割り付け、primary endpointを生存期間、secondary endpointをprogression-free survival(PFS)、奏効率、奏効期間、安全性、QOLとし両群を比較した。生存期間の中央値はIFL+bevacizumab群、IFL+placebo群でそれぞれ20.3ヵ月 vs 15.6ヵ月(p<0.001、ハザード比0.66)と有意差を認めた。PFSの中央値もそれぞれ10.6ヵ月 vs 6.2ヵ月(p<0.001、ハザード比0.54)と有意差を認めた。奏効率は44.8% vs 34.8%、 奏効期間は10.4ヵ月 vs 7.1ヵ月であった。bevacizumab投与群における特有の副作用は高血圧であったが、容易に制御可能であった。著者は転移性結腸直腸癌患者においてfluorouracil-based化学療法にbevacizumabを加えることで、臨床的に意味のある生存期間の延長が得られると結論付けている。
bevacizumabはCPT-11、LV/5-FU併用療法の効果を高め
生存期間を延長させたが、対象に疑問も残る
今回のRCTにおいてbevacizumabはQOLを低下させるような副作用は少なく、5ヵ月の生存期間の延長は臨床上意味のあるものであると評価できる。bevacizumabはIFLの奏効期間を延長し生存期間を延長させることから、腫瘍抑制機序はcytoreductionというよりむしろ腫瘍増殖抑制であると推察される。患者の背景は大腸癌転移症例であるが、単臓器転移症例が約40%であり、その詳細および切除可能か否か明記されておらず疑問が残る。大腸癌多発肝転移の場合、施設により切除率に差があるが、両葉5個以上(H3)肝転移があっても、切除し得た場合の生存期間の中央値は30ヵ月を超えており、現状では切除をまず試みるべきであろう。今後、外科切除やoxaliplatinなどの化学療法との組合わせを期待したい。
(消化器外科・斎浦明夫)