進行膵癌に対する上皮細胞成長因子レセプターに対するモノクローナル抗体であるセツキシマブとゲムシタビンとの併用療法:多施設第II相試験
Henry Q. Xiong, et al., J Clin Oncol 22(13) 2004 : 2610‐2616
この試験の目的は、上皮細胞成長因子レセプター(EGFR)陽性の進行膵癌患者に対してセツキシマブとゲムシタビンの併用療法を行い、奏効率、増悪までの期間、生存期間、生存率、副作用を明らかにすることである。
測定可能病変を有する未治療の局所進行または転移性膵癌で、EGFR陽性の患者が、この多施設第II相試験の対象である。セツキシマブは初回量が400mg/m2で、その後7週間250mg/m2を週1回投与。ゲムシタビンは7週間1000mg/m2を週1回投与、8週目を休薬とする。その後は、セツキシマブを週1回投与、ゲムシタビンを週1回3週間投与、1週休薬のサイクルとした。
61人の患者に対しEGFRの有無を検査し、そのうち、58人(95%)が少なくとも1+で免疫組織学的陽性であった。最終的に41人がこの試験にエントリーし、5人(12.2%)がpartial response(PR)、26人(63.4%)がstable disease(SD)であった。増悪までの期間中央値は3.8ヵ月で、生存期間の中央値は7.1ヵ月であった。1年無増悪生存(progression free survival:PFS)と累積1年生存率は12%と31.7%であった。グレード3、4の副作用は好中球減少(39.0%)、衰弱(22.0%)、腹痛(22.0%)、血小板減少(17.1%)であった。
セツキシマブとゲムシタビンの併用療法は進行膵癌に対し希望がもてる治療であり、引き続き臨床試験が必要である。
膵癌においても期待される抗癌剤と分子標的薬剤との併用療法
現在、切除不能進行膵癌の予後を改善する治療として、ゲムシタビン単剤を凌ぐ併用療法はない。膵癌患者のQOLと限られた余命を考えれば、ゲムシタビンと分子標的薬剤との併用により副作用を少なくし、生存率を改善することができれば理想である。今回の第II相試験では奏効率の改善はなく、1年生存率とPFSで若干の成果がみられたが、決してインパクトは大きくない。膵癌の生存期間は、治療開始時点の病期とターミナルケアにおける緩和ケアの手厚さによって1〜2ヵ月の差が容易に生じうるからである。また、グレード3〜4の副作用がみられたことも無視できない。しかし、膵癌の化学療法において抗癌剤と分子標的薬剤との併用療法への期待は大きく、適切な臨床試験を通じて迅速に評価すべき治療法である。
(内科・猪狩功遺)