米国臨床腫瘍学会(ASCO)によるstage II結腸癌に対する術後補助化学療法の指針
Al B. Benson III, et al., J Clin Oncol 22(16), 2004 : 3408-3419
stage IIの結腸癌の手術単独成績は良好なため、米国国立衛生研究所(NIH)でも臨床試験以外の術後補助化学療法は推奨していない。一方、Medicareのデータでは、stage II結腸癌でも、かなりの症例に対して補助化学療法が行われている。そこで、ASCOでは、過去のrandomized control trial (RCT)のデータなどから、stage II結腸癌に術後補助化学療法を行うべきかを検証した指針を作成した。
方法は、37のRCTと11のmeta-analysisについて検討した。37のRCTのうち、12のRCTについては、stage別に文献の記載に基づくmeta-analysisを行った。結果、stage IIにおける術後補助化学療法による生存率の延長は認められず、stage IIの結腸癌患者に対して画一的に術後補助化学療法を行うことは推奨できないと結論している。ただし、stage IIのなかでも再発のリスクが高い症例(検索リンパ節数の少ない例、他臓器浸潤例、低分化型癌など)では、術後補助化学療法を考慮してもよいとし、最終的な適応は、これまでのエビデンスについて、患者に十分説明した上で選択すべきとしている。
成果が待たれるハイリスク症例に対する術後補助化学療法の有効性
結腸癌に対する術後補助化学療法の有効性は、stage IIIではRCTにより確認されているが、stage IIに対しては、今回の結果でも否定的であった。ただし、stage IIのなかでも再発のリスクが高い群があるのは事実であり、それらのハイリスク症例に対する術後補助化学療法の有効性は確認されていないが、stage IIIに準じて補助化学療法を行うことは容認し得るとの見解である。
stage II結腸癌の予後は良好(癌研のデータでは5年生存率89%)であるにもかかわらず、本邦でも、かなりの症例に術後補助化学療法が行われているのが現状である。今回の指針は有識者のコンセンサスによる一定の成果といえるが、標準的な治療とするためには、ハイリスク症例に限定したRCTが必要である。現在、欧米では、stage II結腸癌を対象として、いくつかの分子生物学的なマーカーにより前層別したRCTが進行中であり、これらの成果が待たれる。
(消化器外科・上野雅資)