論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

10月

FDG-PETにより食道癌患者の術前放射線化学療法後の
病理学的効果や生存率を予測できる

Stephen G. Swisher, et al., Cancer 101(8) , 2004 : 1776-1785

 この研究では食道癌患者の術前放射線化学療法+切除治療において、病理学的効果と生存率の予測について、2-Fluoro-2-Deoxy-D-Glucose PET(FDG-PET)がどれほどの価値をもつかを検討した。
 術前放射線化学療法とFDG-PET、腫瘍切除を行った83人の食道癌患者において、切除組織の病理学的効果と腫瘍残存率、および患者の生存を評価した。
 この研究に参加した患者の多くは男性(89%)であった。組織学的には腺癌が多く(88%)、EUSで臨床病期T3ないし4が69例(83%)、N1が46例(55%)であった。放射線化学療法後のFDG-PETは病理学的有効例を同定できたが、73例中13例(18%)で顕微鏡的残存腫瘍を同定できなかった。病理学的効果は放射線化学療法後のFDG-PETでのStandard Uptake Value(SUV)と相関し(P =0.03)、SUVが4以上は生存率を悪化させる唯一の術前予後因子であることがわかった(2年生存率34% vs 60%、P =0.01)。Cox単回帰分析で、放射線化学療法後のFDG-PETのみが、放射線化学療法後の生存率と相関した(P =0.04)。
 食道癌患者における放射線化学療法後のFDG-PETは、術前放射線化学療法の病理学的効果とその後の生存率の予測因子であることがわかった。しかし、現実にはたとえ放射線化学療法後のFDG-PETが正常であっても、顕微鏡的残存腫瘍の存在を否定しきれないので、その後の食道切除は依然として考慮されるべきである。

考察

放射線化学療法におけるFDG-PETの意義

 手術単独に加えて術前放射線化学療法を行うことで予後の改善が実現できるかどうかについては、これまで証明されているわけではない。最近、FDG-PETにより術前放射線化学療法にresponseのある群が同定できると期待されているが、83例と比較的多くの症例で検討したこの報告は注目に値する。今回の報告により、放射線化学療法後のFDG-PETの意義について三つの点が強調できる。残存腫瘍量が多い場合は検出できるが、少ない場合は検出が困難である点、手術後の予後の悪い群を予測できる点、偽陽性が多く感度が低い点である。従って、FDG-PETは、食道癌患者における術前放射線化学療法の病理学的効果とその後の生存率を予測することが可能だと考えられる。しかし、対象症例に腺癌が多く食道胃接合部の癌が多いなどの偏りがあり、日本の状況にそのままあてはまるかは不明な点もある。

(化学療法科・陳 勁松)

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