論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

2月

進行結腸・直腸癌third line治療としてのLV5FU2療法(5FU静注+持続)と
FOLFOX 4療法(oxaliplatin+LV5FU2)の多施設無作為化第II相試験

Kemeny N, et al., J Clin Oncol. 2004; 22(23): 4753-4761

 本多施設研究ではfluoropyrimidineおよびirinotecanによるfirst line治療およびsecond line治療後の転移性結腸・直腸癌の増悪例を対象に、third line 治療としてLV5FU2療法とFOLFOX 4(oxaliplatin+LV5FU2)療法を比較し、oxaliplatin併用による有効性を検討した。
 本研究には、組織学的あるいは細胞学的に結腸・直腸腺癌による組織病変が検出され、手術不可能であると診断された18歳以上の患者で、Karnofsky performance status(KPS)≧50%の患者214例を組み入れた。Oxaliplatinによる治療歴、制吐剤・下痢止め薬に対する不耐性を有する患者は除外した。参加者を2群に無作為割り付けし、1群にはLV5FU2療法(day 1とday 2にLV 200mg/m2静注+FU 400mg/m2 bolus静注後、22時間かけてFU 600mg/m2を静注、以後2週間毎に繰り返し)、別の群にはFOLFOX 4療法(LV5FU2療法と同じ治療スケジュール+day 1にoxaliplatin 85mg/m2を2時間かけて静注)を施行した。主要エンドポイントは全奏効率(CR+PR)とした。
 FOLFOX 4群はLV5FU2群と比較して、全奏効率で高く(13% vs 2%;p=0.0027)、悪化までの期間(中央値)は長かったが(4.8ヵ月 vs 2.4ヵ月;p<0.0001)、生存期間(中央値)では差はなかった(9.9ヵ月 vs 11.4ヵ月;p=0.20)。LV5FU2療法を受けた人のうち72例(69%)はoxaliplatinの後治療を受けていて、その72例のうち奏効は6%であった。Symptomatic improvementもFOLFOX 4群が有意に優れていた(32% vs 14%;p=0.05)。グレード3/4の副作用は、FOLFOX 4群 vs LV5FU2群で好中球減少(42% vs 13%)、下痢(16% vs 6%)、神経障害(6% vs 0%)であった。
 転移性結腸・直腸癌患者に対するFOLFOX 4療法はLV5FU2療法よりも奏効率が高く、悪化までの期間も延長しており、fluoropyrimidineとirinotecanを用いたfirst line治療およびsecond line治療後の増悪例に対するthird line治療として有効である。

考察

日米の実地診療におけるFOLFOX 4療法

 本試験が行われた当時の米国でのfirst line治療は、bolusのLV/5FUもしくはIFL療法(bolus LV/5FU+irinotecan)であった。本試験ではIFL抵抗性のsecond line治療 としてFOLFOX 4療法が有効であるというRothenbergらの結果と同様の結果が得られている。生存期間では差がないが、LV5FU2療法の69%がoxaliplatinの後治療を受けたためと考えられる。また、自覚症状の改善が良好であったことは、実地診療において有意義である。当時の米国と、LV/5FUの投与方法が急速静注しか認められていなかった日本の状況は同じであり、LV/5FUの持続静注が承認され、oxaliplatinがまもなく承認されるであろう現在、国内でもFOLFOX 4療法の有効性と安全性を早急に確認し、実地診療で使えるようにすることが重要である。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪医療センター 三嶋秀行(外科医長)

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