食肉摂取と結腸直腸癌リスク
Chao A, et al., JAMA. 2005; 293(2): 172-182
赤身肉や加工肉摂取と結腸直腸癌との関連性は多くの疫学研究で示唆されている。しかし、長期的な食肉摂取がもたらすリスクに関する研究はほとんどないことから、短期および長期の食肉摂取と結腸直腸癌発症リスクとの関連性を検討した。
米国21州の一般住民14万8,610名(年齢50歳〜74歳[中央値63歳])から、1982年および1992/1993年のCancer Prevention Study II(CPS II)Nutrition Cohortへの登録時に、食肉摂取に関する情報を収集した。今回、1992/1993年の登録時から2001年8月までの追跡調査を行ったところ、1,667例で結腸直腸癌(結腸部1,197例、直腸S状部および直腸部470例)の罹患が確認された。主要エンドポイントは結腸直腸癌発症率の比(RR)とした。
1992/1993年の調査における短期の赤身肉や加工肉の大量摂取は、年齢およびエネルギー摂取量を調整後、結腸癌のリスク増加と関連していた。しかし、さらにBMI、喫煙、その他の共変量を調整すると関連性は消失した。長期的摂取に関しては、1982年と1992/1993年の両調査のいずれも加工肉摂取量が3分位高値の群は、両調査で3分位低値の群と比べて遠位結腸癌のリスク増加が認められ(RR 1.50;95%信頼区間[CI]1.04〜2.17)、同様に赤身肉摂取量と家禽・魚摂取量との比が高い場合にもリスク増加が認められた(RR 1.53;95%CI 1.08〜2.18)。家禽・魚の長期的摂取は近位および遠位の結腸癌リスクと逆相関していた。1992/1993年の調査における赤身肉大量摂取は直腸癌のリスク増加と関連し(5分位の最低値群に対する最高値群のRR 1.71;95%CI 1.15〜2.52;傾向性に関するp=0.007)、1982年と1992/1993年の両調査における大量摂取報告も同様の関連性を示した(3分位比較でRR 1.43;95%CI 1.00〜2.05)。
今回の調査結果は癌リスク評価において長期的な食肉摂取を検討することの意義を明らかにしており、赤身肉や加工肉の長期大量摂取による大腸遠位部の癌リスク増加の知見を支持するものである。
赤身肉・加工肉長期摂取は結腸直腸癌のリスク因子である
本研究は、米国住民約15万人(男性:約7万人、女性:約8万人)を対象とした大規模なコホート研究であり、結果の信頼性と内部妥当性は非常に高いと考えられる。結腸直腸癌発症と赤身肉・加工肉摂取との関連は、男性で特に強く、女性では弱いという結果は、1973〜1999年の研究をメタアナリシスした結果(Norat T, et al. Int J Cancer. 2002)と全く一致している。本研究では、赤身肉摂取量と家禽・魚摂取量との比についても検討を行っている。興味深いことに、女性では結腸直腸癌発症と家禽・魚摂取に強い負の関連があることから、この比と結腸直腸癌発症との間には、男性と同様に強い正の関連がみられている。また、部位別にみた場合には、遠位結腸癌との関連が示唆されている。これまでの研究を総合的に判断して、赤身肉・加工肉摂取が結腸直腸癌のリスク因子であることはほぼ確実であり、結腸直腸癌の一次予防に食習慣の改善は不可欠であろう。
監訳・コメント:京都大学医学部附属病院 手良向 聡
(探索医療センター検証部・助手)