化学療法施行により転移性結腸・直腸癌が治癒切除可能となる:
Intergroup N9741からの経験
Delaunoit T, et al., Ann Oncol. 2005; 16(3): 425-429
5-FU、oxaliplatin、irinotecan併用療法は、転移性結腸・直腸癌患者のTTPを延長し、奏効率やOSを改善する。今回、Intergroup
study N9741において治療された手術不能な転移性結腸・直腸癌患者の中に、化学療法により十分な治療効果が得られ転移病巣が切除可能となった例が認められたので報告する。
局所進行・再発または転移性の結腸・直腸癌患者で、治癒切除不能または根治目的の放射線療法に奏効しない患者を対象として、A群:irinotecan/5-FU/LV療法(IFL、n=264)、F群:oxaliplatin/5-FU/LV療法(FOLFOX
4、n=267)、G群:oxaliplatin/irinotecan療法(IROX、n=265)のいずれかの化学療法を施行した。患者記録を調査して、化学療法の施行により転移病巣の切除が可能となった患者を抽出し、TTPおよびOSの中央値を算出した。
調査対象となった795例のうち24例(3.3%)の転移病巣が治癒切除された(肝切除術16例、ラジオ波凝固療法[RFA]6例、肺切除術2例)。治癒切除が可能になった24例中22例(92%)はoxaliplatinベースの併用療法を受けていた(FOLFOX
4:11例、IROX:11例)。中央値34ヵ月の追跡期間において7例(29.2%)は無病状態を維持しており、再発は主に切除臓器に発現した。切除患者におけるOSの中央値は42.4ヵ月、TTPの中央値は18.4ヵ月であった。RFAを施行した6例は全例再発した。肝切除術後に化学療法が施行された5例については、中央値32ヵ月の追跡期間中4例(80%)が無病状態を維持した。
化学療法、特にoxaliplatinベースの化学療法施行後には、転移性結腸・直腸癌患者の一部ではあるが重要なサブセット集団で転移病巣の切除が可能となり、これらの極めて選択された患者のOSおよびTTPには期待がもてる。
化学療法が有効であった結腸・直腸癌患者に対する
外科治療実施の可能性
本論文は5-FU、oxaliplatin、irinotecanの併用療法に関する多施設共同研究(Intergroup
study N9741)において化学療法により切除可能となった24例の報告である。転移臓器は肝転移22例、肺転移2例で、ラジオ波凝固6例が含まれる。切除可能とした判断基準の記載がなく、795例の登録患者のうち、CRおよびPRが309例あったにもかかわらず手術を行ったのはわずか24例などあいまいな点が多いが、切除例のTTPおよびOSの中間値が18.4ヵ月および42.4ヵ月と優れていたことから、化学療法有効例での外科治療の重要性を訴えている。同様の報告として、1996年Bismuthらは切除不能な大腸癌肝転移に対して化学療法を行い、切除可能になった53例の手術成績を報告している。3、5年生存率が54%、40%と、最初から切除可能であった肝転移症例の成績と遜色なく、大きな反響を呼んだ。
欧米では5-FU、oxaliplatin、irinotecanの三者の併用が当然となり、高い奏効率を期待できるようになった。日本でも最近oxaliplatinが保険適応となった。今後いったん切除不能と判断した症例の治療においても、新たな切除の可能性を見据えた治療戦略が求められるようになろう。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 関本貢嗣(消化器外科学・助教授)