論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

5月

結腸・直腸癌の治癒切除後における補助化学療法の無作為化比較:
bolus 5-FU/LV投与6ヵ月と5-FU持続静注12週

Chau I, et al., Ann Oncol. 2005; 16(4): 549-557

 結腸・直腸癌における5-FU持続静注(protracted venous infusion:PVI)12週間投与の有効性および毒性を、標準的な補助化学療法であるbolus 5-FU/LV 6ヵ月間投与と比較するために多施設共同無作為化試験を実施した。
 1993年から2003年にわたり、ステージII/IIIの結腸・直腸癌の治癒切除を施行された患者801例を、bolus 5-FU/LV 群404例(5-FU 425mg/m2+LV 20mg/m2 静脈内bolus投与、day 1〜5、4週1サイクル×6回[6ヵ月間])またはPVI 5-FU群397例(300mg/m2/日、持続静注、12週間)に無作為に割り付け、治癒切除後12週以内に補助化学療法を開始した。なおbolus 5-FU/LV群のうち70歳を超える症例では、5-FU開始用量を370mg/m2に減量した。
 5.3年(中央値)の追跡期間中、再発231例および死亡220例が認められた。5年間の relapse-free survival(RFS)は、bolus 5-FU/LV群66.7%(95%CI 61.6〜71.3%)に対し、PVI 5-FU群73.3%(95%CI 68.4〜77.6%)であった(HR 0.8;95%CI 0.62〜1.04;p=0.10)。5年overall survival(OS)は、bolus 5-FU/LV群71.5%(95%CI 66.4〜75.9%)に対し、PVI 5-FU群で75.7%(95%CI 70.8〜79.9%)であった(HR 0.79;95%CI 0.61〜1.03;p=0.083)。治癒切除後8週間以内に補助化学療法を開始した患者は、8週を過ぎて開始した患者に比べて良好な生存曲線を示した(p=0.044)。PVI 5-FU群では、下痢、口内炎、悪心および嘔吐、脱毛、嗜眠ならびに好中球減少症が bolus 5-FU/LV群に比べて有意に少なかった(すべてp<0.0001)。
 今回比較した2つの治療法のOSに有意差はなかったものの、PVI 5-FU群のRFSおよびOSはbolus 5-FU/LV群に比べて良好な傾向がみられ、毒性も有意に低かった。今回の検討ではPVI 5-FU 12週間投与がbolus 5-FU/LV 6ヵ月間投与よりも劣る確率が極めて低かった(p<0.005)ことから、術後補助化学療法の期間短縮についてさらに検討すべきと考えられる。

考察

短期5-FU持続静注の可能性

 本報告は、stage III 進行大腸癌に対する補助化学療法として5-FU/低用量LV(20mg/m2)と5-FU/高用量LV(200〜500mg/m2)、5-FU/LVの6ヵ月投与と12ヵ月投与が同等であること、本試験で行われているMayo regimen(5-FU 425mg/m2+LV 20mg/m2、day 1〜5、4週1サイクル、6ヵ月)とRoswell Park regimen(5-FU 500mg/m2+LV 500mg/m2、毎週6回、8週毎に3サイクル)に有意差がないこと、さらにbolus投与に比し5-FUの持続投与がより血液毒性が少なく、わずかであるが有意に予後を改善しているという報告を元に企画されている。初期の716例の19.8ヵ月経過時点での結果では、PVI 5-FU群でRFSがより良かったが(特に直腸癌のsubgroupで)、OSでは差がなかった(Saini A et al., Br J Cancer. 2003; 88(12): 1859-1865)。しかしこの時点では直腸癌が218例であったため、症例をさらに集積して今回報告している。本検討の結果では、PVI 5-FU群のRFSおよびOSはbolus 5-FU/LV群に比べ良好な傾向がみられ、毒性も有意に低い。一方RFSならびにOSに関する多変量解析の結果では、stage II もしくはIII、T3もしくはT4が最も有意な危険因子として挙げられている。Stage III、術後放射線療法施行可能とされているT4が、PVI 5-FU群の直腸癌で多いことが結果に影響を与えている可能性はあるが、短期の術後補助化学療法でも従来法に比して劣らない可能性が示唆されている点で貴重な報告である。

監訳・コメント:藤田保健衛生大学医学部 前田耕太郎(外科・教授)

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