論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

6月

結腸・直腸癌転移病変に対するoxaliplatin+irinotecan+5-FU/LV併用療法(OCFL):第 I/II 相試験

Seium Y, et al., Ann Oncol. 2005; 16(5): 762-766

 結腸・直腸癌転移再発例を対象に、oxaliplatin(L-OHP)+irinotecan(CPT-11)+5-FU/LV併用療法(OCFL)のMTD(maximally tolerated dose)と抗腫瘍効果を検討するため、多施設共同第 I/II 相試験を実施した。
 対象は、結腸・直腸癌からの転移病変を有する18〜70歳の患者である。ただし、評価可能病変を有し、転移病巣に対する前治療を行っていないPS≦1、血液検査値および腎・肝機能が正常なものを対象とした。Bolus LV 30mg+5-FU 2,300mg/m2/24時間持続静注(day 1、day 8、day 15、day 22)とL-OHP 70〜85mg/m2/2時間静注(day 1、day 15)およびCPT-11 80〜120mg/m2/30分間静注(day 8、day 22)投与を 1サイクルとし 5週ごとに実施した。第 I 相試験ではL-OHPとCPT-11のMTD決定を目的として4段階のdose escalationを行った。
 Dose-limiting toxicity(DLT)は用量レベル3(L-OHP 85mg/m2および CPT-11 100mg/m2)において発現した。このため推奨用量(RD)はL-OHP 70mg/m2、CPT-11 100mg/m2、LV 30mg、5-FU 2,300mg/m2/24時間であった。本検討で対象とした30例のなかで評価可能病変を有する28例のうち、CRは2例、PRは20例に認められ、全奏効率は78%であった(95%CI 59〜92%)。PFSとOSの中央値はそれぞれ 9.5ヵ月、25.4ヵ月であった。7例で肝転移巣が切除された。有害事象では、グレード3以上の毒性の発現は、下痢23%、好中球減少20%、倦怠感7%、神経毒性7%であった。発熱を伴う好中球減少は2件認められた(うち1件は致死性)。
 OCFL療法は抗腫瘍効果に優れ、外来での投与も可能な治療法であり、結腸・直腸癌の転移性病変切除前の腫瘍コントロールに最適な治療法と考えられる。

考察

結腸・直腸癌転移病変に対する
L-OHP、CPT-11を交替投与するOCFL療法

 今回報告された療法は、oxaliplatin(L-OHP)、irinotecan(CPT-11)、5-FU/LV を単一レジメに入れるOCFL療法のなかでも、有害事象の発現を低くする工夫としてL-OHPとCPT-11を交替で投与している点がこれまでのものとは異なる新しい投与法である。Phase I study の結果からL-OHPとCPT-11の推奨用量(RD)が L-OHP 70mg/m2、CPT-11 100mg/m2となり、外来での投与も可能である。また有害事象の発現はL-OHP と CPT-11を同一日に投与する他のOCFL療法に比し低く、さらには評価可能病変を有する 28例の奏効率が 78%と高かった。以上より本療法は、進行・再発大腸癌に対する化学療法のなかで現在最も注目されているFOLFOX療法や、FOLFIRI療法の不効症例に対する効果も今後大いに期待される。

監訳・コメント:福島県立医科大学医学部 関川浩司(外科学第 2 講座・助教授)

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