高齢の進行性結腸・直腸癌患者に対する
LV/5-FU+L-OHPの2分割投与による抗腫瘍効果増強と神経毒性軽減
Mattioli R, et al., Ann Oncol. 2005; 16(7): 1147-1151
結腸・直腸癌の年齢別罹患率は加齢とともに上昇する。高齢者の人口比は年々増加しており、今後は結腸・直腸癌患者の増加が予想される。本疾患に対するLV/5-FU+L-OHP併用療法の有効性は確認されている。著者らは多施設共同臨床第II相試験において、高齢の転移性結腸・直腸癌患者へのfirst lineの化学療法として、LV/5-FU+L-OHPの2分割投与をベースとした治療法のfeasibility studyを実施した。
組織学的・細胞学的に転移性または局所進行性の結腸・直腸癌が確認された、70歳以上、ECOG PS 0〜2の患者を対象とした。L-OHP 45mg/m2(90分かけて静注)+LV 200mg/m2(2時間かけて点滴静注)、5-FU 400mg/m2(10分間bolus静注)、5-FU 600mg/m2(22時間持続静注)をday 1とday 2に投与し、2週間を1サイクルとして繰り返し実施した。
2001年8月〜2004年7月に78例が試験に登録され、年齢の中央値は75歳(70〜85歳)であった。評価可能であった77例のうち、7例(9%)がCR、32例(42%)がPRと認められ、全奏効率は51%(95%CI 41〜63%)であった。19例(25%)はSD、19例(25%)はPDであった。カナダNCIによるグレード3または4の毒性として、好中球減少32%(うち発熱を伴うものは2件)、下痢10%、粘膜炎4%、倦怠感4%が発現した。知覚神経毒性は軽度で、6%にグレード3の毒性が発現した。治療中、日常生活動作(ADL)スコアおよび手段的日常生活動作(IADL)スコアに有意な変化はみられなかった。
LV/5-FU+L-OHPの2分割投与は、高齢の進行性結腸・直腸癌患者に対して高い抗腫瘍活性を有していた。L-OHPを分割投与することによって重篤な神経毒性発現率を低下しうると期待されるが、この可能性についてはさらなる検討が必要である。
個別化医療を考慮したL-OHP投与法の可能性を示す
本研究におけるLV/5-FUの投与法はFOLFOX 4に類似したものであるが、L-OHPの投与を2回に分けた点と70歳以上の高齢者を対象としたところに意義がある。効果に関しては、TTP 8ヵ月、OS 20ヵ月と、若年者と同等であった。また平均8サイクル(1〜19サイクル)施行されておりコンプライアンスも良好な結果である。さらに、ADLやIADLという客観的な指標でQOLを評価し良好であることも強調されている。副作用の面では、血液毒性の出現率が高率で抗腫瘍効果が期待できるregimenであるにもかかわらず、知覚神経毒性の出現率は過去の報告に比してかなり低いことが特徴的であり(グレード3:6.4%、グレード2:16.7%、グレード1:37.2%)、その理由をL-OHP 2分割投与の効果に求めている。副作用の差は年齢に起因する可能性もあると思われるが、著者らのいうようにさらなる検討が必要であろう。いずれにしても、欧米人に比べて体が小さく、人種も異なる日本人に対するL-OHPの投与法を検討する際に参考となる、可能性を秘めた内容であることは間違いない。
監訳・コメント:新潟大学大学院医歯学総合研究科 岡本春彦(腫瘍外科学分野・講師)