論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

8月

有効性の複合解析:LV/5-FU療法へのbevacizumab追加投与は
転移性結腸・直腸癌患者のOSを有意に向上させる

Kabbinavar FF, et al., J Clin Oncol. 2005; 23(16): 3706-3712

 遺伝子組換えヒト化抗VEGFモノクロナール抗体bevacizumabは、腫瘍の血管新生を阻害し、LV/5-FU+CPT-11(IFL regimen)への追加投与により、未治療の転移性結腸・直腸癌患者において延命効果をもたらすことが示されている。これまでに実施されたLV/5-FU+bevacizumab併用療法の有効性を検討する3つの多施設無作為化臨床試験は、組織学的に確認された2方向評価可能病変を有する、未治療の転移性結腸・直腸癌患者を対象としていた。これら3試験では、LV/5-FUにbevacizumabを追加すると抗腫瘍効果が上乗せされることが明らかとなったものの、サンプルサイズの不足からOS延長に関しては有意差が示されなかった。そこで今回、LV/5-FU+bevacizumab併用療法の有効性をより正確に評価するために、これら3試験のデータを用いてOS、PFSおよび奏効率に関する複合解析を行った。
 3試験のいずれかでLV/5-FUまたはIFL療法を受けた症例(複合対照群;合計241例)あるいはLV/5-FUにbevacizumab(5mg/kgを2週間毎に1回投与)を追加した症例(LV/5-FU+bevacizumab群;合計249例)に関して複合解析を行った。
 両群の年齢、性別、人種、ECOG PS、罹病期間などに有意差はなかった。OS中央値はLV/5-FU+bevacizumab群17.9ヵ月、複合対照群14.6ヵ月であり、死亡に対するハザード比は0.74であった(p=0.008)。PFS中央値はLV/5-FU+bevacizumab群8.8ヵ月、複合対照群5.6ヵ月であり、進行に対するハザード比は0.63(p≦0.0001)であった。Bevacizumabの追加投与により奏効率も改善した(34.1% vs. 24.5%;p=0.019)。
 未治療の転移性結腸・直腸癌患者において、LV/5-FU療法へのbevacizumab追加投与は、統計学的に有意かつ臨床的にも明らかな有用性をもたらした。

考察

複合解析で示されたbevacizumabの上乗せ効果

 既にbevacizumabは、欧米の日常診療においても切除不能・再発大腸がん患者に対する化学療法と併用されている。現在の大腸がんに対する一般的な化学療法はFOLFOX(LV/5-FU+L-OHP)またはFOLFIRI(LV/5-FU+CPT-11)であるが、両者共通にみられる骨髄抑制だけでなく、前者の場合には神経毒性、後者の場合には嘔吐、下痢などの毒性が強く現れることがあり、高齢者やPS不良な症例などに対してはLV/5-FUだけで治療されることも多い。今回の複合解析では、奏効率、PFS、OSともにbevacizumabの上乗せ効果が示された。しかもそのOSの中央値はIFL(LV/5-FU+CPT-11)以上であり、bevacizumabの併用によりhigh risk群でもIFLと同等以上の延命効果が得られることは意義があると考える。NCCN guidelineにもLV/5-FU+bevacizumabがhigh risk群に対する第一選択として推奨されている。

監訳・コメント:静岡県立静岡がんセンター 朴 成和(消化器内科・診療科部長)

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